I wish to be your only one … L.O.V.E ４th

Precious Lover … １５６ ページ12

「新海センセイが言う通り…静かだなぁ…」

さっきまで賑やかだった部屋は、一度に皆帰ってしまって今はオレだけ…

広くてキレイなトコだけど、あんま人の気配がしない分、なんだか寂しくなった


新海センセイから、「ヒロミツさん、あなたはアタマの中にある腫瘍を取り除く手術をしたんです」と、目が覚めて少ししてから聞いたけど、オレは何がどうなってんのか全然わかんなかった

正直に「わかりません…」て答えたら、「それでいいです」て言って笑ってくれた

何がいいのかも、どうすればいいのかも分からなくて、何となく傍にいてくれた看護師さんを見てたら

「もう大丈夫なので、お部屋移りますね」と優しい声で教えてくれた

「どこに？」
「元々いたお部屋ですよ、…家族の方が待っておられます」って答えてくれた

「かぞく…」て言われてもなんの事か全然浮かばない、言われてる単語の意味はわかるけど、それが誰なのか思い出せない…

顔も名前も…名前の文字一つ出てこない…
そもそもオレはいつからここにいるんだ？

思い出そうとすればするほどその先が見えなくて、遂には気持ち悪くなって来てしまった、オレの異変に気付いた看護師さんが、そっと背中を摩って気持ちを落ち着けてくれた

「ごめんなさい…」
「いいえ、ムリに色んなコト考えなくていいんですよ、宏光さん…でももう少しここで様子を見ましょうね」
「……」

そのまま、またベッドに寝かされて、オレは目を閉じた

誰の声も聞こえない…
例え聞えても、きっと分からないのかもしれない…


そして、次に目が覚めた時にストレッチャーが用意されていて、この病室に運ばれた

遠目に見えた人影は二つ…男の人だった…


この病院にいる人と同じ格好をした人…と、グレーのジャケットがよく似合ってる人…

二人のその顔に全く見覚えはないけど、その人たちの横を通る時、ジャケットを着た人がオレを見つめる瞳に、何故かオレの胸をギュンと苦しくなった

病院の人は、オレに人懐っこく微笑みかけながら、ストレッチャーからベッドに移る手助けをしてくれた、その後に入ってきたのがジャケットの人…

会ったことも無い人なのに、どうしてこんな哀しそうな目でオレを見るのか…オレは不安になって直ぐに目を逸らしてしまった


二人きりの部屋…



誰…？と聞いたオレに、その人は、《トモダチ》だと言った

ずっと前からの《トモダチ》だと…



でも、あの看護師さんは《家族》が待っていると言った


家族……？

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