LOVE CASTE … 恋哀階級 vol. ５

CASTE … ２３９ ページ48

太輔の答えに、質問の記者が満足そうに頷いた

「とても明確で真摯な御返答、ありがとうございます、新会社の今後益々のご発展をお祈り申し上げます」

「ありがとう…私達もご期待に添えるよう最大限の努力を致します…」

そして、取材は終わりの時刻となった

スタッフに促され会場を出ようとした時、「藤ヶ谷CEO」と呼び止められた、振り向くと最後に質問をした記者がいた

その人をスルーさせようとしたスタッフに、太輔は手を挙げそのままでいいとアイコンタクトを送り、オレに大丈夫だと頷いてみせた

この男…太輔に何がしたいんだ？何かあればすぐに対応できるよう、オレは周りに目配せをして太輔のすぐ側で成り行きを見守ることにした


「…まだ私に何か？」

太輔の目の前にいる男は、特別な強い想いを含んだ表情で太輔を見つめていた

「私の名前は結城 旺と申します…、覚えておられますか？」

太輔の表情が一瞬で変わる……、結城…って、あの…っ！？

「沙耶香の…？」
「そうです、…７年前、貴方の父上を手にかけた結城沙耶香の弟です…、あの時は姉の無念さをあなたにぶつけてしまうような真似をして、大変申し訳ありませんでした…、無礼な態度を謝りたくて…」
「…そうですか、あの記者会見での事なら私に蟠りはありません…何もかも放り出す様にアメリカに戻ったのは事実です、あなたの見解は間違ってはいない、謝る必要はないです」

太輔の言葉で、オレはこの人が太輔に黒川氏とMARSに対してかなり手厳しい質問を投げつけた記者だと言うのを思い出した、そして太輔が「次に会った時に同じ質問をしてくれ」と返事を返した事も…

「姉が亡くなった時、私は本来なら黒川への制裁は貴方がすべきことだったと考えました、姉は貴方の身代わりになって黒川を手に掛け、自らの命を持ってその償いに当てたのだと…けどそれは私の思い違いでした、姉が本当に望んでいたのは、黒川氏が残した負の連鎖を断ち切ること、貴方にそれを託したんですね…、黒川氏への最大の復讐は、彼なら絶対に成しえなかったMARSを作ること、あなたは見事にそれをやってのけた…、本当に素晴らしい経営者だ…」

「…ありがとう、沙耶香には本当に申し訳なかったと思っています…貴方にもご家族にもとても辛い思いをさせてしまった…許して欲しいとは言いません、ですが沙耶香の命を掛けた想いは、これからも必ず繋げていきます」


そして太輔の手と、涙が滲む結城さんの手がギュッと繋がれた

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