LOVE CASTE … 恋哀階級 vol. ５

CASTE … ２２７ ページ36

背後から聞こえたその声に、つま先までもが反応し、ギュッと全身が固まった

今オレを呼んだのって……
そんなはずない…
アイツが今ここにいるわけないんだから…


もし空耳だとわかったら、またオレは太輔との距離を感じてしまう
そう思うと怖くて、俯いたまま顔が上げられない


「どうした北山、ナニ固まってる？」

聞こえてきたもう一人の声は、間違いなく木村社長だ

振り向いたオレの目に映ったのは…スーツ姿の男が二人…

1人は木村社長…そして、もう1人は…


「……なん…で……っ！？」
「ただいま、ひろ…」

それは、紛れも無く《藤ヶ谷太輔》だった
7年前と何一つ変わらない…静かな優しい笑顔がオレに向けられていた

「たいすけ…？」

口にする度に切なさが湧き上がるその名前を、オレは今やっと音として感じることが出来た

立ち上がったまま動けないオレの傍に来ると、そっとオレの手を取ってくれた、オレよりも少し大きな温かい手…、何も…ホントに何も変わっていなかった

目を反らせたら、すぐ見えなくなるんじゃないか、そんな気がして、オレは太輔だけを視界に取り込むように見つめた


「驚かせてゴメン…先に会いに行くのがホントだと思ったんだけど、なんか…どんな顔して会えばいいのか分かんなくて……木村社長にお願いしたんだ…ビジネスの話もあって…」

「ビジネス…？」

問いかけるオレに、木村社長が軽く咳払いをして注意を促した、かるーく…いや重ーく睨まれてる……

「あ…申し訳ございませんっ！大変お見苦し所ををお見せいたしましたっ！！」
慌てて太輔から握られていた手を引っこ抜くと、オレは焦りまくって頭を下げた

「ほら、お前も謝れって！」
「え、オレも？」
「当たりめぇだろっ！！ど天然っ！」
「ど天然…って、７年ぶりに会えたのにそれ酷くね？」
「るっせぇよ、放ったらかしはお互い様だろ」

そのやり取りに、口元を抑えて渋い表情をしていた木村社長が、耐えきれなくなったように笑い始めた

「ｸｽｸｽ…、あーもお、堪んねぇなお前ら…あ、失礼…、ﾌﾌ、どんなに離れてても、会えば時間なんて関係ねぇんだな…、座れよ」

しみじみ…て風に木村社長は呟き、掌でオレ達にソファを示した

まるでエスコートする様にオレを隣に座らせると、太輔は対面の木村社長に顔を向けた



「そうです、私はこの人に会う為に…会える自分になる為に、全てを賭けてアメリカでチャンスを待っていました、やっと…今それが叶いました」


「太輔…」

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