LOVE CASTE … 恋哀階級 vol. ５

CASTE … ２１９ ページ28

ドイツ フランクフルト国際空港行きの便…

オレは、チェックインを済ませた後、出発ロビーで搭乗アナウンスを待っていた

ドイツ到着の時間を考えて取ったのは午前の便…
早めにチェックインを済ませようとしたけど、今時期は、どの時間帯も空港は人で溢れていた

しばらく日本に帰ってくるつもりは無い…そう思うとこの景色にも愛着が湧いた

スタンドで買ったコーヒーを飲んでると、「トモ…」と声がした、振り向くと、生成のニットパーカーにブルーデニムの小柄なヤツが立っていた、相変わらずの大学生みたいなカッコだけど、不思議とコイツには良く似合う…

学生証を持ってきてくれた日を、思い出した…


「…よく分かったな…誰に聞いた？」
「…ﾌﾌ、…ナイショ、…隣、いいか？」
「…構わないよ」

バックとジャケットを戻すと、宏光は微かに微笑みながら、そこに腰を下ろした

そのまま、オレと宏光の間に無音の空間が出来る、オレはコーヒーを飲みながらチラリと宏光を視界にいれた

何を話そうかと考えてるのが、その表情に現れてる…ホント気ぃ遣いだよな、最後の最後まで…

「…太輔、昨日アメリカに行ったんだな…」

そう話しかけると、宏光の表情が微かに和らいだ、アイツはその名前だけでも、宏光にこんな柔らかい表情をさせられるんだな…と少しだけ羨ましく思えた

「うん…」
「最後までアクの強いパパラッチもどきが来てたな、でもアイツの返し、オレ、なんかスカッとしたわ」
「あー、アレな…」


MARSの日本法人を買収したのは、業界3位の製薬会社だった、MARS…と言うよりは太輔個人の持っていた全ての特許を含めての買収ということで、結構な話題となった

「今回の買収で《MARS Medicine industrial》の名前は完全に消滅ですね、MARSの中枢と言うべき特許まで売り渡してしまわれた、志半ばで亡くなられたお父様に申し訳ないというお気持ちは？黒川氏の本妻と正当な後継者である弟さんの未来を、あなたはどこまで考えられたのですか？」

「特許を手放せば、アメリカ本社での事業も頓挫しますよね、あなたは結局、黒川氏に復讐したかっただけではないのですか？黒川氏が作り上げたMARSと言う名前を、地に落としたかっただけですよね？」

無礼な妄想でしかない発言を繰り返すその記者を、太輔は冷静な表情で見つめていた

そして最後に口を開いた


「次にお会いした時、私にもう一度その質問をして下さい…あなたの顔、覚えておきます」

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