LOVE CASTE … 恋哀階級 vol. ５

CASTE … ２１２ ページ21

「雨か…やべ置き傘なかったよなぁ…コンビニでビニ傘買うか…」

セキュリティの掛けられた正面玄関からはもう出られなくて、社員通用門から外に出ると、結構な雨が降っていた…


すぐ近くのコンビニに入って、傘を買うためにレジに並んだ、そういや太輔…コンビニで１０円無くてオロオロしてたよな…


お釣りの１０円玉を見ながら、ふとそんな事を思い出した…



太輔かいなくなってからは、雨が降ると必ず太輔との出会いを思い出すようになった

トモへの抑えきれない思慕を抱えたまま、そこから動けなくなったオレを太輔が前に進ませてくれた…優しい笑顔と溢れるほどの穏やかな愛が、オレの雁字搦めの心を解いてくれたんだ…

地下鉄に乗り、最寄り駅で下りる…
「宏光、おかえり！」

不意打ちみたいに、改札出たとこで待ってたこともあった…やっぱり雨の日…なんでかオレの分の傘持たずに迎えに来やがって文句言うと

「だってこうしたかったんだもん！」って俺の腕引きよせて、一個の傘で帰った…アイツ左側だけめっちゃビショにして、それでもニコニコ幸せそうに笑ってたんだ…


全部全部、オレは覚えてる…

太輔のくれた言葉、眼差し…笑顔……優しさ…そして……愛しさと……幸せ………


忘れることなんか無い…
忘れられるはずが無い…

この想いに、リミットなんかないんだ…



太輔……太輔………っ…




見えてくる公園…

だれもいないその公園に、オレは引き込まれるように足を向けた


アスファルト舗装はされてない…知らず水たまりに入ってしまって、履いてた靴が汚れてしまった


けど、そんなこと構わない…


なあ…またオレがココで待ってたら、お前は迎えに来てくれるのか…？



冷たい雨に凍えそうなオレを、抱きしめてくれのか…



もしそうなら、オレはこの《雨》に感謝するよ…




差していた傘を地面に置き、薄暗い街灯に仄かに照らされたブランコに腰をかけた


月も星も…空には何も見えない…

見上げた顔に降りかかる雨粒は、とても冷たくて…でもその中に体温と同じくらいの雨がある…



《優しい雨》がオレの頬を幾筋も流れていく…




会いたい…
会いたいよ……

太輔、お前どこで何してんだ？


何度も何度も、繰り返した…




《優しい雨》なら、アイツ連れてきてくれよ…


滲む視界が暗い空を捉えた時、
雨粒が止んだ…




「風邪ひくから…」



そして…
耳に心地いい声が、フワリとオレを包んだ…

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