LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.３

CASTE … １０１ ページ6

｢急だったからな…アメリカにあるウチの会社の研究機関に行かされた｣
｢…そか……、だよな…あのさ太輔、お前キタミツの勤めてる会社…どこか知ってんの？｣

渡るの言わんとしてる事は、直ぐに察しがついた

｢…JーSTAR製薬だろ｣
｢知ってんのか…｣
｢この前聞いた…ちょっと驚いたけど…｣
｢ならキタミツは？お前のコトどこまで知ってんだ？｣
｢…愛人の子で、本妻が産んだ弟に遠慮して家を出てきた現在進行形のプータロー…ってとこかな？｣

｢…おま肝心なコト言ってねぇのかよ！？｣

呆れたようにそう言って、ハァ…と渉が溜息ついた、分かってるよ…でも

｢言う必要ある？｣
｢あるだろっ！｣

真剣な顔そのまんま、声が大きくなる渉

眠ってたひろが、その声に身じろいだ
あ…っと渉の表情が焦りを見せる

｢大きな声だすなよ、ひろ起きちまうだろ｣

寝かしつける様に背中をポンポンと軽く叩くと、また規則正しい寝息が聞こえてきた

｢ずっと黙ったまま付き合うつもりなのか？｣
｢それは無い…でも今言う必要無いと思ってる、だから頼むよ、お前もそのつもりでいてくれ｣
｢オレが黙ってたって、いずれバレるぞ｣

｢…わかってる…｣

それでも、伝えるのは今じゃない…
トモとのことで苦しんでるこの人に、オレの全部を話してどうしようって言うんだ

悩ませるだけだ…

こうして傍にいるのがライバル会社の新薬開発者の第一人者で…


そして今も…JーSTARを蹴落とす為に同じ《移植免疫抑制剤》を研究開発中なんて…

沙耶佳にはああ言ったけど、《免疫抑制剤》はほぼ完成していた、あの家を出る時オレは完成したこのデータの全て持ち出していた

研究所に置いてあるのは、開発途中までの症例とデータベース…


オレはMARSの歯車じゃない…


他者との開発競争に忙殺され、心身ともに疲れ果てていたオレは、最後の《切り札》を手に、あの家を出た…

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