LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.３

CASTE … １２９ ページ35

(下りてこい)

口の形でそう言ってるのがわかる、
鋭い眼光は、子供のときからオレを怯えさせ服従させてきた、老いを感じさせてもその視線の鋭さは変わらない、…変わらないどころか威力を増しているように見えた

逆らえるわけがなかった…
血の滲む程唇を噛み締め、玄関を出て下に下りる…

エントランスを出た時には、アイツは後部座席からオレを満足げに見つめていた、ガキの頃からオレが従うとこの男はこの顔をした

絶対的な力関係を思い知らされる

｢乗れ｣
その声にドライバーがドアを開け、隣に乗ることを促してくる

仕方なく乗り込み、男から目を逸らし外に目を向けた

車はそのまま道を走り出す

あの日と同じだ…
有無を言わさず拉致されるように連れていかれた…あの日

大切なものを全て奪われた記憶が戻ってくる


｢おまえ、随分と優しい顔になったな…研究所にいる時は手負いの獣のように冷たく研ぎ澄まされた目をしていたクセに…すっかりあの北山とかいうヤツに飼い慣らされてしまった様だ、全く、つまらないヤツに成り下がったものだ…｣

｢うるせぇよ…、テメェに関係ねぇだろっ！｣

毒づくオレを鼻で笑い、黒川は射るような視線をオレに向けた

｢無くはない、貴様がMARSの筆頭研究員であることに変わりは無い、お前がどう足掻こうがお前の人生はMARSと共にあることを忘れるな｣

｢オレはMARSとはもう関係無い、黒川は捨てた…アンタには柊一郎がいるだろっ！MARSは正式な息子の柊一郎が継げばいい、もうオレを解放しろよっ！｣

｢柊一郎にはMARSを継がせない…あの出来損ないには無理だ、太輔、MARSに戻るんだ｣

｢出来損ない…って、アンタそれでも父親かよっ！柊一郎はまだ１５歳だ、未来はいくらでもある！｣

｢柊一郎の未来とMARSの未来は一致しない…戻れ太輔、これは命令だ｣
｢ふざけんなっ！車を止めろっ！｣

突きぬけるような怒りを、オレは助手席を蹴り飛ばす足に込めた

｢止めてやれ、下品だな…あの男のせいか？｣

｢下品なのはテメェの血だろ…虫唾が走る｣
｢ｸｽｯ……お前は最高の息子だ、その頭脳を下らない感情で台無しにするのは忍びない…何度も言わせるな…MARSに戻れ｣

｢断るっ！｣

路肩に止めた車のドアを開けた時



｢ならば新薬のデータを渡せ…貴様が持って出た《免疫抑制剤》の最終データ…知らないとでも思ったか？、ダミーなど小賢しい真似を使い私の目を誤魔化せるとでも思ったか？愚かなヤツだ…｣

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