LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.３

CASTE … １２６ ページ32

｢念願の《免疫抑制剤》も予定より早く完成したな、何よりだ、ホッとしたよ｣
｢ホントです、かなりケツ叩きましたけど研究所も良く頑張ってくれました｣

木村常務の部屋で、滝沢部長を含め3人で今後の相澤総合病院への対応策を考えていた時、久しぶりに木村常務の笑った顔を見た様な気がした

｢北山、ガン細胞への新薬の改良も進んでるんだろ｣
滝沢部長からの問いかけに、オレは大きく頷いた

｢もちろんです、コチラも近いうちに改良型を相澤総合病院に見てもらいます、木村常務が動いて頂いたお陰で相澤院長ももう一度ウチを指定して下さって、何とか白紙撤回を回避できました、ありがとうございます｣
｢いや、お前が研究所の所長に食い下がってるのを黙って見てるわけにはいかないからな｣
｢木村常務のバックアップが無ければ、あのまま所長に論破されて終わりでした｣
｢研究畑の人間のプライドの高さは、オレもイヤというほど思い知らされてるからな｣
｢ソレは私もです｣

そう言って、滝沢部長も笑う
このお二人はウチの会社でも群を抜いての生粋の営業マンだ、木村常務については数年後の社長の座は確実だと言われてる

あの日トモからは白紙撤回を言われたけど、木村常務の配慮で相澤院長がそれを取り成してくれた

何とか首の皮一枚で繋がってるというのを実感していた


｢山下医師は仕事に対しては容赦ない人物のようだ、それはそれで信頼がおける、北山は良くやってくれているよ、仕事はチームプレーだ、何かあれば相談に乗る、無理すんなよ｣

｢はい、ありがとうございます｣

お二人からの有難く力強い言葉に、オレも身が引き締まる思いで一杯になる

｢この契約が終わったら、また統括部に戻って来い、またオレのサポート頼むな｣
｢はい、こちらこそよろしくお願いします｣

｢そう言えば北山、お前結婚は？｣

唐突に木村常務からの質問にオレは目が点になった

｢は…結婚…ですか？｣
｢おう、お前もう三十路過ぎてるだろ？早く結婚して落ち着けばいい、恋人は？好きな人はいないのか？｣

好きな人…
胸に浮かぶその人は、オレを優しい眼差しで見つめてくれていた

｢…そうですね、許されるなら…その人と生きていきたいと思います…って、ぬあっ！？｣

な、何を言ってるんだオレはっ！？


｢ふーん、…お前いつの間にそんな人作ってたんだよ、なるほどねぇ、北山にそんな表情させる人がいるなんてなぁ、時々しんどそうな表情してたから気になってたが、何よりだな｣

CASTE … １２７→←CASTE … １２５

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す