LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.３

CASTE … １１７ ページ23

｢宏光、先にゴメン…お風呂入んなよ、冷めちゃうから｣
｢あー、うん…もうこんな時間か…｣

メシ食った後、オレはもう一度《免疫抑制剤》に関するデータを読みふけっていた

普段家には仕事を持って帰らない様にしてるけど、今回ばかりはそういう訳にいかない…自分なりにデータを読み解き、相澤総合病院への突破口を見つけなければウチは契約を解除されてしまう…

無糖のコーヒーを飲みながら、パソ画面をスクロールしていく…データは化学的要素ばかりで、正直頭に残るのは一部分だけど、やらないよりは遥かにマシだ

｢マジわかんね…｣

セルフレームのメガネを外した時、太輔が部屋に入ってきた


｢まだ仕事？｣
｢ん？…あんま持ち帰りしたくないんだけどな…｣
｢トラブル？｣
｢いや、…お前が気にすることじゃねぇよ、さて風呂でも入って頭スッキリさせよかな…｣

特に何も思わず、オレはパソコンを起動させたままにして、風呂に行った


バスルームは、トモがいた時とは違う香りに充たされていた…もう待つだけの時間は要らない…

トモが何と言おうと、オレはもう…太輔といる、包まれる香りは、二人で選んだ香り…

この香りがある限り、オレは…トモの元には戻らない…

新しい毎日に《幸せ》の意味を感じながら、オレはこの香りを胸に吸い込んだ


リビングに戻ると、太輔が本を読んでいた

｢あ、出たんだ…髪乾かしてあげる｣
｢うん、頼む｣

いつもの定位置…太輔はソファ、オレは床…
ドライヤーの温風に扇がれてフワリと鼻を擽る香りは、太輔と同じ…

触れてくる指先は、優しくて気持ちいい…

時々、オレの髪に鼻先をくっ付けて｢同じだ…｣って嬉しそうに言う太輔を本当に愛しいと思う…

｢太輔…｣
｢ん？｣
｢いなくなんないよな…お前は…｣

｢…どうしてそんなコト聞くの？｣

ドライヤーを止めて、オレを後ろから包んでくれる…香りが重なって…濃くなる…

回された腕を、オレはキュッと握った


｢…一人にしないで…｣

思わず伝えてしまった言葉に、オレは焦りまくった、

何言ってんだオレ、こんな追い込むようなコト…

｢悪ぃ重いよなオレ、今の気にしなくていい、忘れていいから！｣

慌てて腕の中から抜け出そうとした時、太輔の両腕がオレに絡み付いた

｢重くなんか無い…嬉しい…｣
｢太輔…｣

｢今まで、ホントのオレを必要としてくれる人なんか誰もいなかったから…、今オレ…嬉しくて堪らない…っ｣


そっと肩越しに擦り寄せられる頬と唇…

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