LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.３

CASTE … １０９ ページ15

｢完成したデータが？｣
｢…そうでなければ、こんなイキナリの契約白紙撤回なんて考えられない…免疫抑制剤の独占契約をチラつかせてウチからMARSへ乗り換えさせたんじゃないのか｣

｢独占契約…ですか？｣
｢ああ、移植医療はこれから大きく伸びる分野だ、より副作用が低い抑制剤があるなら患者の身体的負担は少なくて済む、そしてその抑制剤の契約が相澤一択なら…そこから先は言わなくても分かるだろう｣

相澤院長は、日本各地の大学病院にコネクションがある…MARSにしてみればまずは相澤そしてそこを起点に販路を拡大できれば、日本でのシェアを確実に広げることが出来ると踏んだんだろう

｢MARSはウチを敵視してる、例えどんな手を使ってでもJーSTARを蹴落とす…これはMARSからの宣戦布告だな…｣

滝沢部長が唇を噛み、苦々しく言葉を続けた
木村常務は一言も言葉を発すること無く、唇を引き結び何か思案してるような表情を浮かべていた

｢相澤に行って真相を聞いてきます、白紙撤回なんてありえない｣

担当者として、こんな状況を黙って指を咥えて見てるわけにいかない、トモに会わないと…

｢そうしてくれ、相澤はこの件については今担当者が取り込み中だと言って話に応じない、ウチを完全にバカにしてるとしか思えない｣

木村常務がウンザリしたような声でそう言った

｢北山、ひとまず先方に行って山下医師とコンタクトを取れ、何でもいい、今回の真相の情報を探って来てくれ、ウチも打てる手は何でもする｣

｢分かりました、行ってきます｣
｢頼むぞ、北山｣

そのままオレは営業部に戻り車の調達をして直ぐに相沢総合病院に向かった

無意識にハンドルを握る手にチカラが入る…
掌にじっとりと汗をかいてる不快感があった


トモ…本当のことを教えてくれ

この白紙撤回、お前から離れていこうとするオレへの《懲罰》なのか？
それとも…MARSが画策したシナリオに、相澤が振り回されてるだけなのか？


眩しい程の青い空が、フロントガラスから広がっている…

けどオレの心の中は、その景色とは真逆…嵐のように荒れていた


アクセルを踏み、逸る想いをスピードに乗せる

目の前に、周囲とは一線を画した建物が見えてきた…駐車場にクルマを止めドアを開けた、途端にムッとした生暖かい空気が、不快を誘う様にオレを包み込んでいく


ガラス張りのエントランス…外来患者は今日も待合フロアに相当数いる


ひしめくフロアを通り抜け、オレは総合案内のカウンターに向かった

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