LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.３

CASTE … １０８ ページ14

櫻井部長に促され、オレは木村常務のオフィスに向かった

ノックをすると秘書の女性が応じ、そのまま常務室に通された、部屋の中にいたのは木村常務と滝沢部長…お二人共険しい表情でそれぞれの報告書に目を通していた

｢お疲れ様です｣
｢うん、呼び立ててすまないな｣

滝沢部長が微かに笑顔を見せ、手のひらでソファに座るよう指示してきた

｢内容は聞いているか？｣
｢はい、相澤総合病院が契約の白紙撤回を要請したきたと…｣
｢そうだ、理由に心当たりはあるか？｣
｢…いえ…、私には何も…｣

そんな筈は無い…この場においても、オレはトモの出方が理解出来ていなかった

｢そうか…、常務、北山にも心当たりが無いとするなら、やはり…｣

滝沢部長が執務机に座っておられる常務に目を向けると、常務は疲れた表情で頷いた

｢MARS…だな｣
｢MARS！？、MARS製薬ですか？｣
｢そうだ、恐らく…だがな｣
｢なぜMARSが？今回の新薬開発はウチの方が早かった筈です！、MARSが横槍を入れる余地なんかどこにも…っ｣

いくらMARSが同じ開発に成功したとしても、相澤が契約締結したウチを差し置いてMARSと契約なんて…、違約金は相当な金額になる、そこまでしてMARSに変えたとしても相澤にはなんのメリットも無い…

だとしたら…この白紙撤回はやっぱりトモがオレを…？まさかそこまで…

ぎゅっと掌を握りしめた時、滝沢部長が悔しそうな表情で書類をテーブルに置いた

｢免疫抑制剤だ…｣

その思いもよらないフレーズにオレは目の前の滝沢部長の顔をガン見した

｢免疫…抑制剤…？｣
｢そうだ、今ウチの研究チームが次の医療ターゲットとして開発中の免疫抑制剤…どうやらMARSはその開発を終えたらしい、まだ不確定情報だがな…｣

｢そんな情報はどこからも入っていません、なのになぜ？｣

｢あくまで推測の域を超えないが、北山、お前MARSの薬剤ほぼ全てを開発してるのが、ただ一人の人物だというのを知っているか？｣
｢はい、聞いたことは…でも、名前も年齢も…性別すらもトップシークレットで、ごく限られた関係者しかその開発者のコトは知らないって…｣

｢そうだ…どうやらその人物が何ヶ月か前から行方不明だという情報が以前からウチに入っていたんだ｣
｢そうなんですか？｣

｢まあソレもあくまでウワサだ…免疫抑制剤のデータを全て持ち出して行方を眩ませたとな…そして今回その人物の所在が分かったらしい、つまり完成した免疫抑制剤のデータがMARSに渡ったというコトだ｣

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