LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ７２ ページ26

｢今日の…あんまり好きな味じゃなかった？｣

｢…えっ？｣

不意にかけられた声に反応して顔を上げると、テーブル挟んで目の前にいる太輔が様子を伺うような表情でオレを見ていた

｢…スプーン持ったまま、ずっと固まってるけど…｣

メシ食ってる最中なのに、昼間のトモとのやり取りがアタマの片隅から消えなくて、スプーンをビーフシチューの中に突っ込んだままボンヤリしてた

｢あ、いや…マジで美味いよ、ビーフシチューとかほぼほぼオレの食生活にないから…、太輔って実は料理上手いのな、お母さんが料理上手なのか？…うん、美味しい！｣

口に入れると…当たり前だがカレーとは違う味がする、めっちゃ煮込んで手の掛かってる味としか表現出来ないのが申し訳ない程で…

モグモグして完食すると、太輔はカラになった食器を見てニコッて笑った

｢…一人暮らし長かったから、自然と…ね…｣と話した、でも…雰囲気がいつもと違う…

｢そうなのか？…大学生から？｣
｢いや、高校入ると同時に一人暮らし｣
｢高校？…そりゃまた随分早くからだな…家族の人よく許してくれたな｣

何の気無しに尋ねると、太輔の笑顔に翳りが見えた…

｢…オレさ、いわゆるお妾さんの子なんだよね…本妻さんに子供できなくてさ、小学生の頃父親に引き取られたんだ、暫くは本宅にいたんだけど、高校入る前に弟が生まれて家を出たんだ、そっからはずっと一人暮らし…そのお陰で大抵のコトできるようになったってワケ！｣

何でもないコトの様に話してくる太輔…けど全くの部外者のオレですら、本妻さんとの生活が息苦しく肩身の狭いものであることは予想がつく、けど太輔はそんな生い立ちを背負っているにも関わらず、少しも心に歪んだ部分が無いように思えた…

｢…寂しかった？｣
｢どうかな？あんまり考えないようにしてた…それに弟が生まれたコトで気が楽になったこともあるし…会社は弟が継げばいい…もうあの家にはオレの出来ること十分尽くして来た…弟が一人前になるくらいまでは、会社は大丈夫だから…｣

最後の言葉は、誰に向けて言っているんだろうか…少しだけ遠くに想いを馳せてる様な太輔を見てると、視線が絡んだ

｢あ、ゴメン…変な話したよね、それにさオレの実の母親も亡くなったから、あの家にオレがいる意味はもう無いんだ｣

太輔は、ちょっと慌てた様に言葉を付け足した


｢それでオマエ出てきたのか？｣
｢うん…まあそんなトコ｣

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