LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ７８ ページ32

｢ただいま…って、アレ？太輔いねぇじゃん｣

いつもなら、玄関開くなり｢ヒロおかえりっ！｣ってリビングからワンコ的勢いで出てくんのに…

電気は消してるけど、食べおわった昼飯の片付けがそのままだった

パッと見、ちょっとお使い…の雰囲気が部屋に漂っていた


｢晩メシの買い出しかな？｣

休日出勤だから、早めの帰宅…いつも家事押し付けてるから、お礼とお詫びがてら太輔の好きなケーキ買って来た

アイツ、喜ぶかな…


冷蔵庫に入れて、スーツから部屋着に着替える…

アタッシュケースからファイル取り出し、今日の打ち合わせ内容を確認した

｢新しいプロジェクト…か…｣


今回は移植医療に関わるものだ…
移植医療は今後大きく伸びる分野だ、ウチもガン研究と合わせて従来から研究チームを立ち上げていた

今回、移植医療の拒絶反応抑制…いわゆる《免疫抑制剤》についての研究チームの発表に参加するように言われていた


今年中には厚生省に申請を出せるだろうという事だった

臓器提供による移植を待っている人は多い…

等しく高度な医療を受けられる手伝いが出来るなら何よりだと思う



また、忙しくなるな…


でも忙しいくらいがいいのかもな、余計なこと考えなくて済むから…

こんな風に静かな時間が出来ると、浮かぶのはトモのコト

あれから何もアプローチしてくることは無い


アイツも、日々の仕事に忙殺されているんだろう…臨床結果報告は、まだ入ってきてはいないけど、患者さんの為にはいい結果を出せてればいいと思っていた



｢…おっせぇな…太輔｣


陽が傾き始めても、太輔は戻って来ない

どこまで買い物に行ったんだろ
今日は早く帰るってオレ言っといたのに、…ったく！


ブチブチ独り言を零しながら、コーヒー飲んでると、玄関の戸が開く音がした

あ、戻ってきやがった！

冷蔵庫からケーキの箱出しながら、その気配に声掛ける

｢やっと帰ってきたのかよ！おま、おっせぇっつーの、…ッ！？｣

振り返った視界には、リビングのドアを開け、無言で入って来た人物にオレは絶句した


｢…誰を待ってる？、迷子のペット？｣

｢…ト…モ……｣



キレイな笑顔を浮かべたトモが、射るような瞳でオレを見ていた…

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