LOVE CASTE … 恋哀階級 vol.２

CASTE … ７６ ページ30

《J・STAR製薬》…

思いがけなく聞かされたヒロの会社

ウチの《MARS MEDICIN INDUSTRIAL》とは
熾烈な争いを繰り返してる競合相手だ

最大手ということもあり、豊富な資金力と優秀な人材確保で医薬特許も多くとっている

噂ではガンの特定因子のみを攻撃できる免疫細胞を飛躍的に増殖させる試薬を開発したと聞いている

それは父親がオレを急かしていた研究でもあった、かなり難しい内容でウチの研究チームも昼夜を問わず開発に力を入れていたけど、結果《J・STAR》に先を越されオレは激しく罵倒された

｢莫大な研究費が一瞬で無駄金だ！貴様は何をやってる！？何のためにあの日お前を引き取ってやったと思ってるっ！？｣

その瞬間オレの中の何かが切れた…

…そんなコト、オレが望んだワケじゃない
オレはあのまま…変わらない日々が続く事を願っていた


…母親を切り札に、子供の頃から全ての時間をあの男に拘束されてきた

友達を作ることも、何か楽しみを持つこともオレには何一つ許されなかった

｢MARSの礎となれ、お前の価値はそこにある｣

その言葉通り、オレはあの男から化学の知識を叩き込まれた

オレを屈服させるのは簡単だっただろう

｢母親の生活はお前次第だ｣その一言で、オレは全てに服従するしかなかった

研究成果を出し続けなければ、母親への援助は否応なく打ち切られる

ロボットの様に、ただひたすら試薬と向き合い、あの男の望む商品を作り上げるだけの日々…


そして、今までオレが手にしてきた特許で、《MARS》の基盤は揺るぎないものになった…

けど結局、オレはこの先の人生…一生、父親という名の独裁者の元で飼い殺しのような毎日を送るんだ、支配するものとされるもの…頂点と最下層…

まるで《CASTE》だ…

心までおかしくなりそうな中…母親が亡くなったと知らされた…

別離の日…、記憶の中の母親と目の前で眠ってる母親はあの人同じ…悲しい表情をしていた


２０年以上…一度も会えなかった母親…

この人さえいなければ、オレは自由になれるのに…と思った日もあった

けれど、目の前のもう二度と目を覚まさない母親は、その目元に長年の苦悩を感じさせるシワがあった

きっと、この人も苦しんでた…
オレを連れていかれ、その後一度も会わせてもらえず、恐らくオレの様子すら教えてもらえなかったに違いない

やっと会えた日が、最期の別離の日なんて…


《母さん…もう、いいよね…》


納骨の日…



オレは…自らの意思で《藤ヶ谷太輔》に戻った

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