あんちゃんが泣いた夜

オレらのあんちゃん …８ ページ9

７人会うなり、ニカにガシッと腕を捕まれ

｢まえあし、めっちゃ良かった！めっちゃめっちゃカッコよかった！｣
って目力強めに言われて、《まえあし》達はもれなく苦笑いになる

｢最後さぁ舞祭組ポーズしてくれてたの、すげぇ嬉しかった｣
｢まさか《FIRE》と《Touch》がテレビで見られるとは、何ともゼイタク！｣
｢オレも録画したよ｣
｢今日のMC、ふんだんにソレを使おう！｣

｢今回ネタいっぱいあるから、ファンの人もMC楽しんでくれるよね！｣
｢おん、ミツの舞台も東京公演千穐楽だもんね、一ヶ月お疲れ様でしたぁ！｣
｢おう、見に来てくれてありがとな｣


照れくさそうな北山の顔を、オレは目の端に捉えながらコンサートの準備を始めた


結局、何にも伝えられてないな…

《まえあし》の時も、ダンスパートの確認したくらいで、特には話していない

｢また藤ヶ谷と《FIRE》パフォするとは思わなかったな、一年ぶりか？｣
｢そだな…｣

前回のアルバムで完結させた《FIRE》
ファンの方にはかなり喜んで頂けたようで、オレ達も満足して終わらせたんだけど、まさか歌番組で披露する日が来るなんて思ってもみないコトで、聞いた時は驚きだった

｢やるからには中途半端はやめようぜ！｣
の一言で短い時間だったけど集中力凝縮して本番に臨んだ

生放送だからやり直しは効かない
そこはオレ達もプロの端くれだから、持てる全てを注ぎ込んだ

３人でのフォーメーションは、あまり無いことで、振り付け師さんと相談しながらカタチ作っていくんだけど、ある意味新鮮だった

リハを終えたタマが、こしょこしょ耳打ちしてくるから何かと思えば

｢やっぱ勝てねぇわ、藤北劇場｣って…
｢なにソレ？｣
｢ミツとガヤは揺るがないってコト！《藤北》カッコイイよ！｣
｢え？｣

可愛くウインクして先に楽屋に帰っていった

｢藤ヶ谷、どした？｣
スタッフさんと最後の打ち合わせしてた北山が、後ろから声掛けてくる

｢ん、…いやなんも…｣
｢ふーん、楽屋行かねぇの？タマ戻ってんだろ？｣
｢うん…｣
｢行こうぜ｣

歩き出した北山の後ろを付いてく
今は２人だけだ…舞台のコト、伝えようか…

｢きたや…｣

でも、オレの声はスタッフさんからのる《お疲れ様です、本番も宜しく！》の声に遮られた

そして、また《背中合わせの藤北》に戻ってしまった



｢ガヤ？ガヤ起きてる？｣
｢ふえっ？｣

気付くと鏡には、オレとニカが映ってて…


｢どしたの？意識どっかトリップしてた？｣って笑ってた

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