あんちゃんが泣いた夜

オレらのあんちゃん …５ ページ6

｢マネージャー、北山の舞台見に行くスケジュールって、もう決まってんの？｣

次の現場に送って貰ってる時、オレはなんとなくを装って聞いてみた

北山に関しては、あくまでも《さりげなーく》をモットーにしてるオレ
もう慣れちゃって、誰も違和感覚えていないはずだ！

｢そうだな…全員一緒には流石にムリだなぁ…｣
って、読み通り助手席でスケ帳出して確認し始めた

｢んーそだな、行けるとしたら、…藤ヶ谷と千賀からかな｣
｢え、そうなの？いつ？｣

おお、オレ一番乗りかよ、フムフム…

｢…そうだな…７日…七夕の日かな、うん、二人行けるな、この日にしよ！｣
｢七夕な…え、七夕？｣
｢そうだけど…なんかプラべでスケ入ってんのか？｣
｢いや、無いです無いです！｣

妙に《七夕》に反応してしまう、オレらは７人
でキスマイ、北斗七星とか虹とか…そして《７》繋がりの七夕は、何となくだけとオレらグループの大切な日みたいに思えていた


それに…七夕って、何ていうか…

名古屋での《ハピバ苺あ〜ん》がオレの記憶の引き出しからぴょこんと飛び出してくる

いやいや、アレは単なるイベントだから！って、目の前の残像を手で払い除けた


｢…藤ヶ谷、何やってんだ？…｣
｢うわっ、な、何でも無いからっ！｣
｢…変なヤツ｣

…そんなの知ってる、北山ゴトはもれなくオレを変にする、…だから、必要以上にアイツに関わらないことに決めたんだ


確か役名は《凌》だった
家族を顧みず出ていった父親と、その父親を憎みながら、幼い頃から必死で残された母親と兄弟を守ってきた青年が北山の役どころ

そして突然戻ってきた父親に戸惑い、揺れ動く家族の心情を描いた作品だ…


北山がこの役を演じることで、気持ちの中にどんな変化が表れるのか、オレは分からない

北山自身が家族の話はほとんどしないし、家族間の関わり方とか、アイツの状況を知ってるヤツはあまりいないんじゃないかと思う

台本に真っ赤になるまで書き込みをしていた北山…セリフを追いながら、ふと見せる寂しげな表情が気になってしまう


親父さん…思い浮かべてるんだろうか…

その人は、どんな人だったんだろう


でも、ソコはオレなんかが立ち入ることは一切出来ないエリアだ


オレに出来るのは、アイツが演じる《凌》の心の変化をしっかりと見てやることだけ、それがきっと、今の等身大の北山の想いだから…



七夕か…


オレ達を隔ててる《星の川》は、


いつ、越えるコトが出来るんだろうな…

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