あんちゃんが泣いた夜

オレらのあんちゃん …２０ ページ21

この舞台最後の休演日

オレは滞在用のホテルの部屋で一人、カラダを休めていた

｢明日で終わりか…｣

無意識に呟きが出る…

６月末から始まった舞台、座長でストレートプレイと言う自分の中で初の経験をさせて貰った

稽古の段階から、共演の先輩方にはホントに色々学ぶコトが多くて、これがホントの《目からウロコ》って言うのを知った

けど…そんな有意義な時間と共に、オレは《凌》でいることにある種の《息苦しさ》を覚えた

《凌》の吐くセリフ一つ一つが心に突き刺さり、胸の奥の…誰にも…母親にすら見せることの無かった部分に、ガツンとどストレートにくい込んできた

痛い…苦しいよ……

オレは《北山宏光》なのに、どうしてこんなにも《凌》であるコトに打ちのめされる…

カーテンコールを終え楽屋に戻っても、オレの中から《凌》が消えることは無くて、《凌》である事の証の、ただ一着の衣装を脱いだ瞬間やっと重い鎧を脱ぐことが出来た安堵と脱力感を感じていた

今回、メンバーと会えるコンサートが無ければ、オレは果てしない疲労感を払拭できなかったかもしれない

７人でいる時は、誰でも無い《北山宏光》でいられたから…

コンサート…アリーナツアーと言うことで、いつもよりも身近にファンの方の反応が見られて、オレらも楽しませて貰った

嬉しすぎてはしゃぎ過ぎて、諸々ヤラカシたコトもあったけど、もちろんソレはしっかり反省点と言うことで、次に生かしていこうと思ってます！

｢このグループじゃなかったらどこがいい？｣

そんなトークもあった
それぞれ何だかんだ言ってたけど、最後タマがキレイに纏めてくれたよな

｢オレこのグループじゃなきゃイヤだ！｣

タマは、前にもそんなコトを言ってくれた
どんなに辛くてもシンドくても、帰る場所があるのはホントに有難いと思う…

三十路を過ぎても未だ未熟者のオレ…
強がってイキっても、ソレは戻る場所があるから…迎えてくれる仲間がいるから…

隣に…唯一無二のヤツがいるから…


｢早く帰りたいな…アイツらんトコ…｣

ニカもまた一つ年齢を上げた、昔は自分しか見てなかったニカ…、今は色んな場面で気を配ってくれる、昨日もオレの微妙な変化に気づいたような気配があった

てか、アイツに心配される日が来るなんてｗｗ
そして、メンバーに…こんなにも会いたいと思う日が来るなんて…

卓上カレンダーには、二つの赤マルがある
大千穐楽と…デビュー記念日だ



｢凌…最後だ、オレと頑張ろうな…｣

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