あんちゃんが泣いた夜

オレらのあんちゃん …１６ ページ17

あの頃は、完全に勘違いの厨二病だった……そして、その根拠の無い自信とムダに高く掲げた鼻っ柱を見事にへし折られて、オレは人生最大に凹み、進む道を迷いに迷っていた

親はそんなオレをどう思ってたのかわからないけど、ウチに帰るといつもオレの分のメシをちゃんと用意して、起きて待っててくれた

｢オマエが納得いくまでやってみろ、いつでも帰る場所はあるんだから…｣って、親父も母ちゃんもいつも笑ってオレのやる事見ててくれた、

ミツの言う通りだ…


｢うん…そうする…｣
｢ちゃんとな…お礼言うんだぞ、オレからはそんだけだ、……ならまた横アリでな｣

フフ…って、ミツの鼻に掛かる笑い声がする
きっと今は、お兄ちゃんな顔して笑ってる

だよな、オレがお礼を言うのは、もう1人いるから…

｢ミツ！｣

呼びかけると、ちょっと間があって声がした

｢…ん、どした｣
｢ありがとう、ミツ｣
｢ｸｽ、…なんだよ急に、気持ちわりぃ｣
｢７人で…って言ってくれて…オレそれが何より嬉しかったから…｣

ガヤと２人…言ってくれた、オレらのグループは５人じゃない、この７人で…って

あの時決めたんだ…
オレは最後までこのグループで生きてく…
この７人の中で、オレが一番グループのコト好きだって胸張って言えるようになろうって

｢…あたりめぇだろ！誰が欠けても、オレら成り立たねぇんだよ、よく覚えとけ！｣
｢へへん、そんなんミツよりよく知ってるし！オレよりグループのコト好きなヤツいないもん！｣
｢くそガキ！、…ならいい…そう言えるまで、オマエよく頑張ってたからな…｣

てっきりもっと茶化されたり説教されんのかと思ったのに、ミツは静かな声でそう言ってくれた…なんか変だ…


｢大阪公演どう？｣
｢ん、たくさんお客さん来てくれて毎日充実してる…けど、《凌》やってるとな…少しだけ辛くなる瞬間がある…被るんだよな…色々｣

｢被る…？｣

何がどう被るんだ？…聞き返したオレにミツはそれ以上何も言わなかった

｢ミツ…大丈夫なの？｣
｢大丈夫に決まってんだろ！じゃな、もうホテル戻るから切るわ！おやすみ！｣
｢うん、…おやすみ…お疲れ｣

そして聞こえてくる不通音…


ＴＥＬ越しでもわかる寂しそうなミツの声が、やけに気になった…


でも、オレがいくら聞いてもミツは言わないだろう…


ホントの意味で、ミツの全部を理解出来る絆を結んでる人




オレの中で、その人は一人しか思い浮かばなかった




｢ＴＥＬしてみよ…｣

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