LOVE CASTE … 恋哀階級

CASTE … ３９ ページ41

｢…雨……？｣

ポトリ…と頬に落ちた雫は、連続してオレの顔に雨粒を降り注いでくる

傘も無く、走って帰る気力もないオレ…

｢いいや…このまま帰ろ……頭冷やせよ…｣

誰に言うことなくそうつぶやき、オレはウチに向かって歩き出した…

一時間…、二時間あればウチに着く…

横尾さんの言う通り、唸るような雷鳴が聞こえてくる

音の感覚が短くなるにつれて、雨粒は大きくなり勢いも増してくる、周囲の人は小さな悲鳴を上げながら横を走り去っていく

その中を歩く速度を変えることも出来ず、オレはウチに向かって歩いていた

もうスーツからは吸いきれない雫がボタボタ流れていて、纏わりつくスラックスが歩みを止めようとしてくる

視界は髪から流れてくる水滴が目に入り、見づらいなと思うけど、それ以上の感覚は無い


流せたらいいのに…

過去も今も…これからも…全部全部この雨が流してくれたらどんなにいいか…


トモの仕草も顔も…声も…

触れる肌も、貫かれる痛みも…髪を撫でる指先も…抱きしめられた胸の温もりも…

キスの仕方も…唇の柔らかさも…



そして……愛しさも…────




｢……ぅ、…っく………ふ…ぅ……ッ…｣




いつもは窓から見てる公園…目にするのは子どもや家族連れで楽しい声が聞こえてる、けど今は、ひっそりというよりもその存在自体を忘れられてるように侘しく見えた…


街灯の光が、降りしきる雨粒の形を浮かび上がらせてる…


土砂降りの雨の中…オレは置いてきぼりをくったようなブランコに乗って、上を向き冷たさと温もり両方の雫を顔に受けた


｢…どうすりゃ…いんだよ…｣


明日からオレは…あの状況でトモとどう向き合うんだ…

契約を結んだ以上、もうオレには逃げ道が無い

家族を作るトモを間近で見つめ続けなきゃいけない…

純白のドレスを来た桜来さんに口付けるトモが消せない記憶から戻って来た…



｢誰か………っ…｣


この現実から救い出して…と声が漏れそうになって、オレは口を覆い下を向いた



その視線に、黒い靴が現れる

そして…滴り落ちる水滴の勢いに変化が起きた


…？

｢…やっと見つけた…｣


見上げたオレの目の前に、傘を差し掛ける一人の男…知らない…人…


｢…誰……｣


そう尋ねると、その人はフワリと笑った

｢…ずっと探してた…｣
｢探して…？｣


小さく頷くと、腰を下げオレの目線まで下りてきた


｢泣かないで…｣



包まれる香りは、初めて嗅ぐ…とても優しい香りだった

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