One Kiss！！…４

チャラくNIGHT？…１４９ ページ7

｢一人の…何も背負わないそのままの《太輔》として生きていかせてやりたいのです…勝手なことを申しているのは重々承知しております、私のこの決断が檀家の皆様に多大なご迷惑をおかけするのも分かっております…私に出来る償いがあるなら、どのようなことも厭わない……、どうか太輔を後継者から外すことをお許し頂きたい…っ｣

床に膝を付き頭を下げる住職を、私も父も驚きの表情で見つめていた

｢ご住職、頭を上げてください…そのような謝罪は一切無用です｣

｢ですが…｣
｢本当に、宜しいのです｣

手を取り抱え上げるようにしてソファに促すと、住職は少しふらつく様に座面に腰を下ろした

｢ご住職、私も妻と添い遂げる為に北山を一度捨てました、ですがやはり…自らが背負った運命を捨てるなど出来ないのです、ならばその運命ごと生きていく道を選ぶべきです｣

｢それは…どういう…｣

｢本当に本気で愛した人なら…そして相手も同じだけの愛を返してくれる人なら、もう一度その手を繋ぐコトは出来ると思います、太輔くんは聡明で誠実な方です、私は檀家総代として彼ほど凛堂寺に相応しい後継者はいないと考えています｣

｢宏哉さん…？｣
｢…ふん、そう来たか…｣

父のニヤリとした笑みが横目に見える

｢太輔くんを後継者として外すことは決して致しません、彼が想う人と…そして憎まれてでも彼の未来を守るために身を引いたその人が、二度と離れなくて済むように私達で考えます、ですからご住職はご自分の身体を大切にして下さい、凛堂寺をその身に代えて守ってこられたのはご住職です、ご住職あっての凛堂寺なのですから…それで宜しいですね、社長｣

父を見やると、苦笑いを浮かべて大きく頷いた

｢全てはお前には任せよう、凛堂寺の次期檀家総代はお前だ、私にはもはや口を挟む権限は無い｣

｢…ということです、どうぞご安心下さい、私の力で他の檀家を必ず納得させてご覧に入れます…凛堂寺の次期住職は《藤ヶ谷太輔》以外は有り得ません、それで宜しいですか？｣

住職に笑ってみせると、その目からはらはらと涙が零れ落ちた

｢…ありがとうございます…、ありがとう…、北山社長、宏哉さん…どうか…どうか私の息子太輔の未来と凛堂寺を…お願い致します…ッ｣

息子…今太輔くんがこの場にいたら、その言葉をどんな思いで聞くのだろう…

そして宏光…
お前にもちゃんと、守りたい人がいたんだな…

良かったよ…
ﾌﾌ、運命の相手はトモかと思っていたが…

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