One Kiss！！…４

チャラくNIGHT？…１７１ ページ30

｢還俗して…？｣

住職様、本当に私と宏光のコトを心配して下さっていたんだ

｢そうです、自分は太輔くんに凛堂寺の住職として生きること以外の選択肢を与えてやらなかった…それは大きな罪だと…もし太輔くんにとって僧侶として生きていくことが幸せでないなら、還俗させてしがらみのない世界で生きることを許してやって欲しい…と仰ってました…｣

あの日、住職様がどこに行かれていたのか結局分からずじまいだった

病院に検診に行くと、私達に嘘まで付いて住職様は、この方達の元に出向かれたのか…

私と宏光の時間を一つにする為に…


｢住職は、貴方の育てる花がとてもお好きだったようです、太輔の育てる花はどの花も優しい色をしている…風に揺れる花を見ていると、幼い頃の太輔の笑顔を思い出すと仰ってました…病を抱えた身体であったが故に為に、住職は多くのコトを諦めてきたそうです…その中には、最愛の人との別離もあったと…、何もかもが辛く、一人で生きていく事に諦めかけた時、星川から凛堂寺住職就任の依頼が来たそうです…｣



《…太輔の両親は、太輔が2歳になるかならないかの時事故で亡くなりました、それ以降あの子は母方の親戚に一時的に引き取られました、両親からの愛も覚えていない頃から、太輔は他人の中で育ってきたのです、おそらくあまりいい環境では無かったのではないかと思います、私が凛堂寺に来た頃の太輔は、殆ど泣かない手のかからない子でした、そして無意識に相手の表情を伺うような仕草をしていました…

幼いながらに、あの子は周りの自分への想いを分かっていたのではないかと思います、自分は誰からも必要とされていない…小さな小さな心が、寂しいと声を上げていました、光の無い瞳…それはまさに凛堂寺に来る前の私そのものでした》

《私は太輔を手元に置こうと決めました…子供など育てるどころか接したことすらなかったのにね…太輔も最初は私を警戒していたと思います、あの子から話しかけてくることは無かったのでね…》

《そんなある日、寺で法要が営まれました…弔問客の中には家族連れの姿もありました…気づくと太輔がその家族を見ていたんです、それまでの人生で私が見た、一番切なく悲しい表情でした、何かを感じたんでしょう……初めてあの子が泣いたんです、今まで堪えていたものを全て吐き出すように声を上げて、私にむしゃぶりついてね…心の底から…泣いていました…》

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