One Kiss！！…４

チャラくNIGHT？…１６０ ページ18

｢…住職…｣
｢住職様…っ｣

その唇が、微かに形を作る…きっともう、その唇が音を刻むことは無い…

それでも住職は、命の最期の灯火をその音に変えようとしていた

｢…聞いています…住職様…｣

あの時のオレと同じ…太輔は住職の口許に耳を寄せ、最期のメッセージを聞き取ろうとしていた

そしてオレも…

住職は、懸命に腕を伸ばしオレ達をまるでその腕に抱き締めるように両手をそれぞれの頭に乗せ、柔らかく撫でてくれた…


｢…幸せに…なりなさい…｣

聞こえてきた声は、小さな…ホントに小さな…針の穴から聞こえてくるような声だった
けど、その言葉に込められた想いと愛情は、何よりも大きく、深くオレ達の胸に届けられた…

｢…ﾂ、お父さん…ッッ！｣

太輔の言葉に住職が微笑んだ様に見えた

そして、ポトリ…と頭を撫でてくれた手がシーツに滑り落ちた…

その瞬間、心臓の拍動を示すラインがフラットになる…一つの人生が、終わりを告げた音がした


トモくんが住職の手を取り、そして閉じられた瞳を確認すると、シーツに落ちた手を胸元に重ねるように戻し、太輔の方を向き口を開いた


｢ご臨終です…とてもご立派な…最期でした…｣

太輔は、何も言わず住職の顔を見つめていた

トモくんは、看護師を呼ぶことをせず、１人で住職の身体に付けていた最後の機器を外し、太輔に頭を下げ、部屋を出ていった…


残されたのは、静かに眠る住職とオレと太輔の三人だけ…部屋の静けさは、住職の眠りを妨げないようにと配慮されてるように思えた


三人…？

そう言えば、ヒロがいない…？

気づかないウチに、部屋からヒロがいなくなっていた


｢太輔、ヒロがいない…｣
｢え…？｣

放心状態だった太輔は、オレの声で我に返った様にその瞳に光を戻した


ヒロ…どこに行ったんだ…────




｢…ヒロは貴方だったんだね…｣
｢はい、…やっとまた会えました、もう忘れられてしまったかと思っていました｣

｢まさか…サヨナラをしてからも、私は一度も忘れたことは無かった…｣
｢私も同じです…逢いたくて恋しくて、姿を変えて貴方の傍にいました…貴方によく似た、優しくて真っ直ぐで少しだけ不器用な青年に見つけて貰いました｣

｢ずっと…私を待っていてくれたの？｣

｢あの日、言ったはずです…私は貴方と共に生きると…きっとまた会えるから悲しまないで欲しいと…覚えていますか？｣


｢覚えているよ…｣



｢もう離れません…私は今でも貴方を愛しています…｣

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