雪華 … Snow Crystal ３

１０３話 ページ10

｢あの子を残して、この世界から消えなきゃ行けない日が来ても、ひろの傍で私に代わってあのこの笑顔を守ってくれる人がいるなら、その人に託したい……っ、…藤ヶ谷くん、アナタは…ヒロを託せる人なのかな…ッ……？ひろ……悲しませないって…約束…できるの？｣


目の前の人は、命の終わりを予感してる人だった…

大切な存在を置いて、逝かなければならないコトを受け入れるしかない哀しみが、オレの胸を締め付けた…

まだ１７歳のオレに、この人は自分の命より大切な宝物を託そうとしてくれてる…その悲痛な叫びが、なお一層オレの宏光への想いを強くした…


答えなんか、アイツと会った時から決まってる…


｢…オレでいいなら…全力で、宏光守ります…｣


そう答えたオレの顔を、宏光のお母さんは驚いた表情で見つめてきた

｢…大切なモノは作らない…ずっとそう決めてました……影として生きるしか存在できないオレ…そんなモン作ったって仕方ないって…けど、そのオレの決心、宏光は見事に覆してきました…宏光の存在は、この先も変わらずオレにとってパーフェクトです、ずっとずっと傍にいます……だから、オレに宏光下さい……｣


｢藤ヶ谷くん、……ホントに宏光のコト…｣


｢お母さんの代わりは誰もいません…アイツもソレは望まないと思います……だから、オレなりのやり方で宏光、大切にします……約束します…でもお母さんは、オレがちゃんと宏光大切に出来てるか見てて下さい……命の限界を決めないで欲しいんです…、宏光、悲しむから…｣


母親と言う人を、オレは知らない…あの日、雪の中で出会った人は、その後も会うことなく突然別れの日を迎えた…

抱きしめてもらったことも、言葉を交わしたことも無い…


お母さんというのは…こんな風に我が子のために全てを賭けれられる人なんだ…

正直、宏光が羨ましいと思った…


｢お母さん…ていい響きですね…｣

｢藤ヶ谷くん……あなた家族は…｣

｢いません、育ての親も亡くなりました…オレには父親だけでしたが、不器用でもオレのコト、一生懸命愛してくれてました…今でも感謝してます｣

オレがそう言うと、宏光の母は苦しそうな表情を浮かべた…


オレはその時、その表情の持つ意味を単なる《同情》だと思い込んでいた…


オレと宏光の出逢いが…オレ達の重なった時間が意味するものが何なのか…


この人は……知っていたんだ…




哀しい結末を…────

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