雪華 … Snow Crystal ３

１０４話 ページ11

その夜…宏光からＴＥＬがあった


オレから会いに行ったコトは、まだ言わないほうかいいかもな…

｢…お母さん具合どうなの？｣

｢うん、もう大丈夫、忙しかったから疲れが溜まって起きた貧血らしい、一週間入院だって｣

｢…そか、大したことないなら良かったよな…｣

そう答えながら、オレは昼間の会話を思い返していた…お母さん、ホントのコトを伝えることは出来ないんだろう……無理もない…


｢ありがとな！、心配してくれて…｣

明るくそう言いながらも、言葉の端々にどこか不安気なトーンが含まれてて…

｢…寂しいなら、ウチ来れば？｣

一人きりの家がどんなに寒く心細いか、オレはよく知っていた…この世界にたった一人、取り残された様な孤独感…その物悲しさを宏光には背負わせたくなかった

｢…サンキュ、でも止めとく｣
｢どして？｣

｢一人で頑張れないとダメだから…もうオレのコトで母ちゃんに心配かけたくない…母ちゃん、ずっと一人でオレ育ててきたんだ、血の繋がらないオレなんか、どっか預けて幸せになればいいのに、たった2人の家族だからって…働き続けて来た…これからはさ、オレが母ちゃん助けなきゃいけないって思ってる…母ちゃんに恩返ししたいんだ…じゃなきゃ、オレの存在意味ないから…｣


TELの向こうの宏光からは、柔らかい口調とは正反対の固い決意が伝わってきた

もしかして、宏光は全部知ってんじゃないのか？

ふとそんな考えが浮かんだ…



｢そか、…そだな、でも無理すんなよ…｣

オレが言えるのはこんなコトくらいしか無い…

｢ん…｣


｢…好きだよ…｣
｢太輔……？｣
｢何があっても、ソレだけは忘れないで…お前が好きだ…｣

少しの沈黙の後…、やっと聞き取れる程の小さな声が聞こえてきた


｢…ありがと……スゴく、嬉し…ッ…｣

その震える肩を、抱きしめてやりたかった…



もうこんな生き方はやめる…

誰かを恨んで、自分を可哀想がって生きてくなんて、まっぴらだ

オレに誰かを幸せにできる力があるなら、その力を最大限大切な人の為に使いたい…



宏光…


オレは



お前の為に、生きていきたい…────

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