オレだけの Candy Baby

ほろ苦candy … ３５ ページ36

「それでは、ただ今のシーンを持ちまして、樫野零役、藤ヶ谷太輔さんオールUPでーす！！」

カットの声が掛かり、カメラチェックの後、現場にスタッフさんの声が響き渡った

そこにいた全員の方からの暖かい拍手と、オレの担カラーを知っていたのか、ピンク色のグラデーションの花束が渡され、オレはそれらを感無量の思いで受け取った

ドラマからの映画は前作品で経験してるけど、今回はけっこうハードな内容で、演じていても、役に入り込みすぎて、撮影が済んでも本来の《藤ヶ谷太輔》に戻るまで時間が掛かったりするときもあった…スゴくいい経験をさせてもらえた作品と時間だった、年下のマサや、共演者の先輩からも学ぶコトも多かった


「藤ヶ谷くん、またキミと組んでいい作品を作りたいね、お疲れ！」
「僕の方こそです、監督、お世話になりました！」
「樫野零から本業のアイドルに戻れるかな？キラキラスマイルの藤ヶ谷太輔も楽しみにしてるよ」
「ありがとうございます！…この後すぐに収録なので、気合い入れ直して、キラキラアイドルしてきます！本当にお世話になりました、皆さんとお仕事させて頂いて、…ホントに幸せでした！ありがとうございました！！」

胸に熱いものが込み上げて来て、下げた頭を中々上げられない…

「こちらこそです！」
「藤ヶ谷さん、また一緒にお願いします！」
「絶対飲みに行きましょうね！」

スタッフさんの暖かい言葉と、満足そうな笑顔に見送られて、オレはクランクUPを終えた…


その足で、次の現場へ向かう…


今日からまた、《藤ヶ谷太輔》の日々が始まる…最初の仕事は【キスブサ】

７人全員が揃う中に戻れることが、嬉しくて堪らない…


撮影の疲れもぶっ飛ばし、オレは逸る気持ちをそのままに、迎えに来たマネージャーの車に乗り込んだ

「お疲れさまでした、ホントは一日くらいお休みにしてあげたかったんだけど、スケジュール立て込んでて、申し訳ない」

ハンドルを握るマネージャーが、労ってくれる

「そんなの良いっすよ、メンバーに会えるのは久しぶりだから嬉しいし、アイツらも忙しいのにオレの穴埋めしてくれてて、感謝してます」

「そう言ってくれると助かる、皆も藤ヶ谷さん帰ってくるの楽しみにしてるみたい」

「えー、ほんとすか？…んなこと言って、スタジオ行ったら全員スルーとかされるんじゃないかな」

「それ、ホントにあったらドッキリだと思って良いです！隠しカメラ探して下さい！」


マネの楽しい声がした

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