Memento ー ４

想い人 … １６４ ページ21

「…良かったな、新薬が使える事になって…、四宮先生のコネクション相変わらず凄いな」
「うん、…これで毎年の体調不良が治まれば有難いな…」


結永を産んでから起こるようになった体調不良…、それは決まって春先から目眩や微熱に始まり、これまでオレを苦しめてきた

幸いにもオレには太輔という頼れる大きな存在がいてくれて、皆川さんやニカ、他にも多くの人がオレの拙い子育てを助けてくれた

そして何より、こんなオレに無償の愛をくれる結永…あどけない笑顔、無垢な瞳…そのどれもがオレの人生の喜びであり、大切な宝物だった

でもこの時期だけは、してやりたいこともままならなくて、太輔や皆川さん、ニカに結永の世話を頼むことが多くなり、親としての不甲斐なさに唇を噛むことが多かった

中でも一番辛かったのは、オレに抱っこして欲しくて泣きだす結永を、太輔が一生懸命あやしているのを見た時だった

四宮先生から海外で開発された新薬が効力があるかもしれないと聞かされ、今回この新薬の取り寄せと大学病院での解析依頼をお願いし、様々な条件をクリアした後、やっと許可が降りたとの返事を受け取った

「服用してみましょう、これは宏光さんの為に開発されたような新薬です、効果はかなり期待できますよ」

セルフレーム越しの静かな眼差しは、四宮先生の信頼性の高さを見せてくれる、太輔もその言葉にホッとしたようだった

服用に当たっての注意事項や副作用の話を聞き終わり、オレと太輔は待ち合いで処方されるのを待つこととなった

点滴を入れてもらって、朝より体は随分楽になり、太輔と何気ない会話をしていると正面のドアが開いた

入ってきたのは、品のいい男性が一人…

その人がオレ達に気付き、反応した、呼応する様に隣の太輔も「あ…」と声を上げた

知り合い…？と見比べた時


「久遠さん…」と太輔がその名前を口にした
「えっ？久遠さん…って…」

その男性はオレ達に深々と頭を下げると「藤ヶ谷さん、その節は大変失礼致しました…」と謝罪の言葉を発した

「いえ、そんなことは…」と太輔が首を振る

「た、太輔、もしかしてこの方って」
「…うん、久遠奏くんのお父さんだよ、…久遠さん、私の番(つがい)の宏光です、結永の母になります」

太輔の言葉にオレはもうビックリで…

「そうですか、初めまして、久遠奏の父です、息子の奏が結永くんにいつも良くして頂いているようで…、ありがとうございます」と、とても穏やかな笑みで挨拶をされた

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