Memento ー ４

想い人 … １６１ ページ18

結永がオレとのことを大っぴらにしたことで、その日は廊下を歩けば相当の視線を浴びた

「誰にも文句言わせずに傍にいるには、これが一番いいから…」と言って、聞かれると「うん、付き合ってる」と恥ずかしがる事もなくあっけらかんと答えていた

オレは、結永って慎重派だと思っていたから、まさかこんな大胆な方法を取ってくるなんて思ってもみなかった

昼休みも「学食行こ」ってオレの手を掴んでさっさと歩き出す

「ちょ、学食は止めた方が…」
「どして？」
「どしてって…あんまりだろ？」

「ん？あんまり？」
「あんな他の学年もいる中で二人でって…流石に目立つって」

繋いだ手を見ながらそう言うと、結永はあ〜…という顔をしたけど、「その方がいいよ」と清々しいまでの微笑みで答えた、そして周囲からの視線を軽く受け流しながらどんどん歩いて行った

「結永、だけど…」
言いかけたオレの言葉を、結永の真っ直ぐな瞳が遮る

「僕が絶対守りますって、奏のお父さんと約束したんだ、だから隠すことはしない、…さて、今日何食べよっかな…」

表情を緩め、学食の入口で今日のメニューを見る結永を、オレは嬉しさの中にほんの少しの揺らぐ想いを持ちながら見つめた


「…やっぱりオムライスにしよ！ソースはデミグラスで！、奏は？」
「んーオレは…チキン南蛮かな」
「えーシェアしていい？」「あ？甘えんな！」
「ひどっ」

嬉嬉としてメニューを選び、堂々とオレを連れて学食に入っていく

元々目立つ結永、朝の出来事も伝わっているのか、入ってきたオレ達を目で追いながら見てくる生徒達

やはりと言うべきか…好意的と言うより、好奇的な視線の方が多い気がした

「…藤ヶ谷くんて、てっきり茉莉花と…」
「だよね、まさか……なんて…」

微かな声でも、オレの耳は拾ってしまう
それは、当然の疑問だった

すっと体温が下がったように感じた時、そっと手が温もりに包まれた

「奏」
「え？」

「忘れないで、…僕がいること」
優しい声音が、繋がれた手の温もりと同じだけ耳にふんわりと馴染んでくる

「うん…」
こんな些細な事で、オレは幸せの温度を知る

結永が、オレを幸せにしてくれる…
幸せになっていいんだ…と眼差しと心で気づかせてくれる





「…ﾌﾝ…馬鹿みたいに幸せそうな顔しちゃって…、ふざけんな…」



だけど…


…誰かの幸せは、誰かの不幸を連れてくる



愛を結ぶという行為は、諸刃の剣なのだと言うことを



オレ達は身をもって知ることになる…

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