愛を育む人 … ９３ ページ48
「それが教授の仰った《後悔》、なんですね…」
「そうだ…」
深いため息が連れてくる言葉は、この先も教授がこの《後悔》と共に生きていくことを決意していると告げていた
「彼女は最後まで凛とした女性だった、産まれたのは男の子でね、出生診断で《ααα》と判明したんだ、だがその頃の彼女には、もう子どもを育てられる体力は残っていなくてね、父親の家に引き取られたんだ」
「その女性は…？」
「数年後に亡くなったよ…、だが、あの状態からそこまで命を繋げられたのは、医学的に見れば奇跡に近い、母親としての愛情と彼の献身的な援助に尽きる、だが友人も病に倒れ亡くなってしまった…、さぞ無念だったろうと思う…彼女の忘れ形見である男の子の将来を、随分案じていたからね…」
思い出を語る教授
その忘れ形見が誰なのか、オレは何となく分かった様な気がした…
運命の番…
儚く散った一つの愛は
巡り巡って、あの二人を結び付けてる…
そして、光を未来に繋げようとしているんだ
「山下くん…」
「はい」
「この治療法には、高い医療技術も勿論だが、医師と患者の信頼関係が全てだと私は思っている、君はそれを勝ち得ることが出来るのか？ましてや前代未聞の治療法だ、君はそれを成功させる自信があるのか？」
「あらゆる状況を鑑みて、この方法しか無いと結論を出しました、母体と胎児…二人の命と未来を繋く為に、日本に戻ります」
「そうか…、君ならやり遂げると信じている、患者は四宮くんの病院にいるんだね、彼がサポートに入るなら、患者を救える可能性はかなり高くなる、彼のお爺さんは私の大先輩だ、気概のある優秀な産科医だった、引退されると聞いて勿体ないことだと思っていたが、四宮くんが跡を継いだなら何よりだ」
四宮とオレは、葛城教授のゼミで大学時代を過ごした、葛城教授の講義は医療技術の最先端を見据えたものが多く、よく日付を跨いで話し込んだものだった
この方法も、四宮の産科医としての高スペック有りきで成り立っている
「いつ日本に？」
「渡航の準備が出来次第、直ぐに…、患者の容態も限界に近くなってきているようです」
四宮からは、今の現状と見通しが送られて来ていたが、数値はタイムリミットが近い事を知らせていた
「行ってきなさい、成功を祈っているよ…」
「はい、ありがとうございます」
差し出された手を握り返し、オレは部屋を出た…
宏光、準備は整った
もうすぐ戻るからな…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 596人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「藤ヶ谷太輔」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» 真の意味でイケメンなので、いつも頼ってしまいますね、こんなド素人の妄想にお付き合い下さり感謝の一言です、ちょこっとでも楽しんで頂けてたら嬉しいです！コメ大感謝です！ (2020年8月6日 18時) (
レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» こんにちは！連コメ＆ご訪問ありがとうございます、はい、書き手がドSなもので、ウチの藤北ちゃんはいつも辛展開でございます、ですがハピエは絶対のお約束なので、ご安心頂ければと思います、うふふ、トモはいつも救世主です、切ない思いばかりさせておりますが、 (2020年8月6日 18時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - 太輔の気持ちも宏光の気持ちも痛いほどわかります…もうトモに希望を託すしかないのかな。どうにか子供と一緒に幸せになってほしい！祈るような気持ちで読んでいます。 (2020年8月6日 16時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» 思います、救世主が参ります笑笑、有り得ない展開が続きますが、宜しければ続き覗いて下さればと思います！コメ大感謝です！ (2019年10月3日 15時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» こんにちは！コメありがとうございます！はい、なんだか雲行き怪しい…、みっくん泣かせてゴメンなさい、こんな展開ばかりでホントに申し訳ありません、でもでもハピエはお約束致します、ですが移行となります、終わらないーどうしよう焦焦。。９章では光が見えてくると (2019年10月3日 15時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：GAYASAKURA
| 作成日時：2019年8月31日 17時
