君想う夢・君恋し花 …８

愛を育む人 … ７８ ページ33

「男の子だって…、ちゃんと性別分かるまで育ってくれてる、…すげぇ嬉しい…」

二人だけになると、宏光はまだ見ぬ我が子を抱き締めるような表情でそう言った、前の妊娠の時は、かなり早い段階で処置が行われたらしくて、小さなガラスのケースに入るくらいまでしか育たなかったと言っていた

「そだな…、もう動いたりしてんのか？」
「うーん…まだちょっと分かんないけど、でも確かにこの子がオレの中で息づいてるのは感じるよ、男の子か…、やっぱり太輔に似てるといいな、‪α‬なら尚更…」

ポツリ…と呟いた一言に、宏光の抱えてる重荷を見たような気がして、オレは傍に行き抱き締めた

「ひろ…、オレは‪α‬でもΩでもどっちでもいい、ひろが産んでくれるなら、オレにとってその子は可愛い天使だよ」

そう伝えると、宏光はクスッと笑って「天使って…お前キザ過ぎ！」と可愛く顰めっ面をした

「だってホントだし！あーそか、天使が天使を産むんだな」
「アホ！オレは天使なんかじゃねぇよ‪w、本物の天使が聞いたら矢で撃たれるぞ」

今日はよく笑ってくれる…
それが本当に嬉しかった、この笑顔をずっと見ていたい…

「天使じゃないなら、オレから離れていかないよな…」
「…太輔？」

抱き締めた、華奢なカラダ…
どうかすると、このまま消えてしまうような脆さがあった

「傍にいるよな、この先もオレを見ててくれるだろ」
「当たり前だ…、離れてなんかやらねぇよ…」

首に腕を絡ませ、肩口に頭を寄せてくる
子猫が甘えるような仕草に、つい口許が綻んだ

「愛してる…」
「うん、…オレも同じ…」

そのまま何度か唇を重ねると、青白かった宏光の頬に、赤みがほんのりと差して来た

「…早く退院できるようにしような」
「オレ居なくても、太輔ちゃんとメシ食えよ」
「ソレはこっちのセリフ、じゃちょっと四宮先生と話してくる」

「うん…」
「また後で来るから、いい子でねんねしてて」
「プッ…お前なぁ…、あのな、とーさんがねんねしてろってさ、一緒に寝ような」

宏光は、お腹に手を置いてそう言うとベッドに潜り込んだ

「…太輔」
「ん？」
「名前さ、考えような…この子の」
「うん、一緒に考えよう」


そんな他愛ない会話が幸せだったんだと、後に気付かされた…




「四宮先生、宏光はどうなんですか？」

カウンセリングルームに行くと、四宮先生が宏光のカルテを持って待っていてくれた


「藤ヶ谷さん、これから私が話すことを、どうか冷静に聞いてください…」

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