君想う夢・君恋し花 …８

愛を育む人 … ６７ ページ22

「うん…、そうですね、おめでとうございます」
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！！」

その瞬間、四宮先生の冷静な声とは真逆、太輔のテンションMAXの雄叫びが、(多分)院内に響き渡った、

ああ…四宮先生の目が点になってる…


「ちょ…っ！おまうるせぇって！！！」
「だってさだって、オレらの赤ちゃんだよ！逆になんでお前そんな冷静なの！？」
「お前がそんなだから全部持ってかれたの！」

オレの分まで横取りして喜んでるし！ちょっと悔しいwww

そんなオレ達を、四宮先生がクールな笑みで見てくれていた

「まあ分かりますよ、予定日は…そう…七夕の頃ですね」
「七夕、ですか？」

偶然の一致に、オレの胸は一杯になった

「ええ、初産なので多少前後すると思いますが、恐らく…、良かったですね、ご懐妊おめでとうございます、これがエコー写真です、まだホントに親指くらいですがちゃんと確認できましたよ」

渡された写真には、小さな小さな命の灯火が映っていた

「可愛いなぁ…」
一緒に見ていた太輔が、感無量て風に呟いてくれる、まだ人の形にすら見えないその子を、愛おしく思ってくれてることが、声音に現れていた

「…あの、」
「なんでしょうか？」
「前の様には、ならないですよね…？」

祈るような思いでそう尋ねると、四宮先生は眼鏡をちょっと触り、頷いた

「前回とは状況が明らかに違います、それは無いと思いますよ」
「そうですよね…はい、」
「ですが…」

「何かあるんですか？」
言葉の続きを太輔が言ってくれた

「いえ、全般的に男性オメガの妊娠には不安要素が付き纏います、どんな妊娠にもリスクはあると考えて頂きたい、それは覚えておいて下さいね」
「はい、わかっています…」

「そのリスクを最小限に抑えるよう、我々が全力で協力します、体力的、精神的に不安になることもあると思いますが、お子さんを抱ける日まで一緒に頑張りましょう、良かったですね、宏光さん…、辛かった日々がやっと報われましたね」

四宮先生の力強いメッセージに、オレの視界がフッとボヤけた…

そして、膝の上の手にポタリ…と水滴が落ちた

「…はい、…はい、ありがとうございます…」
予期せぬ妊娠からの日々…一度も抱いてやることが出来なかったあの子…、二度と戻らない時間を嘆き、自分を責め続けた…

許されるなんて、思っていない
でも、出来るなら本当に愛した人の子を育てたいと願い続けていた


やっと…その日を迎えられる…






そう、思っていた…

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