君想う夢・君恋し花 …８

愛を育む人 … ６０ ページ15

「ユリアさん、大丈夫だったかな…」


枕を背もたれにして本を読んでると、窓際に立ち外を見ながら、宏光がポツッと呟いた、カラダの事を言ってるんじゃないことは、その眼差しの先を見ればよくわかる、読みかけの本を閉じオレはベージュのフワモコを羽織った背中に声を掛けた

「大丈夫だよ…ユリアは今までも色んなこと乗り越えてきた強い女だ、皆川も同じ…、ひろが心配してるようなコトにはならないよ」

「そうだと、いいけど…」
小さく溜息をつき、肩越しにオレの方に顔を向けた、不安そうな表情に胸が揺らぐ…

「…おいでよ、コッチ来て…」
ベッドから手を差し出すと、トコトコ…って音が聞こえそうな足取りでオレの手を取った

そのまま引き寄せ、足の間に座らせると背中から両腕で包み込んだ

「いい匂い…」

風呂上がりのボディソープのスッキリとした甘い香りと、フワモコ越しの体温が心地よくオレを癒してくれる

「同じじゃんか」
「違うよー、元々のひろの香りが加わるからオレとは違う、オレしか分かんない香り、する…」

好きで堪らなくて、項に顔を埋める…
番の証が消えそうになると、上書きするみたいに何度も付けてきたから、もうしっかり肌に刻みつけてある、

満足…この言葉そのままオレはその証に舌を這わした、この合図に宏光が反応する

「…シよ…」
顎に手を掛け、後ろを向かせるように顔を寄せると、人差し指がオレの唇に触れた、
「え？」
「今日はダメ…」
「えぇどして？…あ！、大倉なら下の部屋だから、ひろの可愛い声聞こえないよ？てか聞かせてたまるかってーの！」

てっきりソッチ気にしてんのかと思ってそう言ったけど、宏光は目を丸くして首を振った

「アホか！違うわっ！」
「じゃどして？昨日も触れてないのに、オレ寂しいんだけど…」
「なんででも！今日はしないの！お前はこのまま大人しく寝るの！」
「やぁだよ！ヤダ！」

理由も無く拒否られて、ちょっとショックなオレ…そのままベッドに押し倒して首筋に顔を寄せた、パジャマの裾から手を入れると「太輔っ！止めろって！！」ってカラダ捩って本気で抵抗してきた

「イヤだって言ってんだろ！バカ触んな！」
「…！？」

新年早々の愛しい人からの《NO！》に、オレは結構凹んでしまった

「…ゴメン…、怒んないでよ…」
すごすごと宏光の上から降り、ポフッと隣に寝転んだ

仰向けの宏光、何も言わないその人をチラッと目を遣ると、同じタイミングで目が合った



「あのな、太輔……」

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