愛を育む人 … 59 ページ14
「ご自宅でこざいます…」
皆川の静かな声に合わせるように、車が車寄せに滑り込む…、この話は終わりだ…そう告げられてるように思えた
「謝らせては、くれないの…?」
エンジンを止めた皆川の肩が、ピクリ…と反応した、そして肩越しに私に目を向け微笑んだ
嘲りでもなんでも無く、本当に柔らかい笑顔だった
「私は父の仕事をしてる姿を見たことがありません、お屋敷に近づくことは禁じられていたので…」
「そうね…貴方と会ったのは多くない…」
「ユリアお嬢様が、私の父を覚えていて下さった、そして慕っていて下さっていた…それだけで父の人生は報われたと思います、父は誰も恨んではいなかった、全て己が納得して行った事…悔やんでいたとするなら、己の心の弱さだと思います…、ユリアお嬢様が流してくださる涙、その想いだけで私はもう充分です」
「皆川…」
「縁とは不思議なものです、父が死ぬまで懺悔の気持ちを持ち続けた赤子に、息子の私が今…お仕えしています」
「そうね…」
「宏光さんと父の事実を知った時、もうこの方のお傍に仕えることは出来ないと屋敷を出ました、ですが償いの形すら探せず逃げ出した私を、お2人は探して迎えに来てくださった、そして、私が必要だと仰って下さった…」
その瞬間を思い出しているのか…皆川の声は少し震えているように聞こえた…
「父の懺悔と後悔…その鎖は私が断ち切らねばなりません…、父の様に…今度は私がお二人のお子様を、この命に代えてお守りする、そう決意致しました」
意志の強さを見せる目元と口許…
皆川の想いは、ちゃんと形になってる…
「ですから、ユリアお嬢様が謝ることは無いんです、…でも、ありがとうございます…」
そう言って、皆川は運転席を出ると私の側のドアを開けてくれた、月明かりの下…その笑顔は私の知ってる皆川と同じだった
「ありがとう…」
「いいえ、お身体はご自愛下さいませ…余り無茶はされないように…」
苦笑いでそう言ってくる皆川に、私は微笑み返した
「クス…、楽しいお酒だから大丈夫よ」
「それでもお気を付けください、…父ならそう願うと思います」
皆川の名前を出されると、もう反抗は出来ない
ズルいな…
「分かったわ、今後は気を付けます」
「何よりでございます、…では私はこれで失礼たします、…お休みなさいませ…ユリアお嬢様」
流れるような仕草でアタマを下げる皆川が、子どもの頃とダブった
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GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» 真の意味でイケメンなので、いつも頼ってしまいますね、こんなド素人の妄想にお付き合い下さり感謝の一言です、ちょこっとでも楽しんで頂けてたら嬉しいです!コメ大感謝です! (2020年8月6日 18時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - まいまいさん» こんにちは!連コメ&ご訪問ありがとうございます、はい、書き手がドSなもので、ウチの藤北ちゃんはいつも辛展開でございます、ですがハピエは絶対のお約束なので、ご安心頂ければと思います、うふふ、トモはいつも救世主です、切ない思いばかりさせておりますが、 (2020年8月6日 18時) (レス) id: a6c9395ed2 (このIDを非表示/違反報告)
まいまい(プロフ) - 太輔の気持ちも宏光の気持ちも痛いほどわかります…もうトモに希望を託すしかないのかな。どうにか子供と一緒に幸せになってほしい!祈るような気持ちで読んでいます。 (2020年8月6日 16時) (レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» 思います、救世主が参ります笑笑、有り得ない展開が続きますが、宜しければ続き覗いて下さればと思います!コメ大感謝です! (2019年10月3日 15時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - こっちゃんさん» こんにちは!コメありがとうございます!はい、なんだか雲行き怪しい…、みっくん泣かせてゴメンなさい、こんな展開ばかりでホントに申し訳ありません、でもでもハピエはお約束致します、ですが移行となります、終わらないーどうしよう焦焦。。9章では光が見えてくると (2019年10月3日 15時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:GAYASAKURA | 作成日時:2019年8月31日 17時