君想う夢・君恋し花 …７

愛を育む人 … ３４ ページ35

「皆川さんが、温かいモンがいいだろうからって、卵粥作ってきたよ」
「わ、サンキュ！オレこれ好きなんだよなー」
「だろ？」

鮭の解したのとフワフワの卵が入ってて、塩加減も絶妙で、一人分の土鍋があっという間に空になった

「ご馳走様！ありがと、ニカ」
「ううん…、あのさ……良かったねミツ」

急に真顔で言われて、オレはニカの顔を見た

「ココ、シルシ着いてる…ガヤとやっと番えたんだね、オレ…すげぇ嬉しい…」
グスッと鼻を啜り、拳で目元を拭う、赤くなった目と鼻で、ニカが最高に嬉しそうに笑った

「ニカ…」
「…もうコレでミツの辛い顔、見なくて良くなる…櫻華楼でミツに会った時から、何もかも諦めた顔しか見ること出来なかったから、オレ…」

そのまま顔を覆って泣き出した
そうだった、花魁という立場は、一見華やかに見えても誰より虚無感の中にいた…廓の生き死にを背負わされ、愛も感情も存在しない相手に身を委ねる

感情など捨て置かなければ、自分自身が荒廃への一途を辿るだけだった

「これでやっと、ずっと笑ってるミツ見ること出来る、それが一番嬉しい…」

ギュッて握ってくれたニカの手は、いつの間にかオレより大きくなっていた

「ありがとな、ニカ…廓でも今も…お前がいてくれるから助けられたこと沢山ある、太輔とは違う意味で、お前もオレの家族だと思ってるよ、ずっとずっとこれからも、この家に居てくれよな」
「当たり前じゃん！ミツに子ども産まれたらオレが全力で面倒見ちゃるし！だから安心してミツは何人でも子ども産めばいいよ」

「あのなぁ…、まだそんな話早いって！」
「えーだってHEATの時に番と愛し合ったら子どもできるっしょ？」

あっけらかんと大胆不敵な発言に、オレの方が焦る！

「あ、愛し合っ…っ…おまえちぃコト言うなっっ！」
「え？そんな照れること？摂理だよ摂理！」
「せ、摂理って…」

その時、またドアがノックされた

「宏光さん、皆川です、…二階堂ソコに居ますか？」
今ほど皆川さんが救世主に見えたことは無い！

「はいっ！居ます居ます、コイツ連れてってください！」
このままだと何聞かれるか溜まったもんじゃない

「二階堂、早く次の仕事に取り掛かれ！」
ドアの外から有無を言わせない皆川さんの声音が響く
「は、はーい！今戻ります！！」

あちゃーて顔してニカが立ち上がりドアを開けた、そこには腕組してる皆川さん、オレと目が合うとフッと微笑んで軽く頭を下げた

「少しお話…宜しいですか？」

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