君想う夢・君恋し花 …７

愛を育む人 … ２ ページ3

「ただいま…、ひろ」

ノックをしてドアを開けると、ベッドに横になってた宏光が跳ね起きた

「あ、ゴメン太輔、帰って来てたの気付かなかった、出迎えしなくて悪かった…」
眉を下げて謝り、ブランケットを捲り上げ、直ぐに降りようとした宏光を制するように、ベッドサイドに腰を下ろした、

少し寝癖の付いた髪を整えるように撫でると、柔らかいサラサラとした手触りが指先に感じられる

少し伸びたサイドの髪を耳に掛け、そのまま首筋に手を添えた

「いいよそんなの、体調悪い？大丈夫？」


出迎えの二階堂から、宏光が今日は朝から一度も部屋から出て来ないと、心配した口調で聞かされていた

「お昼ご飯も殆ど残してたし、日課になってた庭の手入れも、今日は全然しようとしなくて…」
「そか…心配かけて悪かったな、お前は大丈夫なのか？二階堂…」

二階堂本人も、皆川が突然この家を出て行ったことに驚いていたけど、昨日のオレ達の様子から、よくよくの事情があると悟ったらしく、思ったより冷静だった、

「皆川さんから、お前は何があっても太輔様と宏光様を信じてお仕えするようにって言われてるから…」
と、この状況を受け止めているようだった


「ん？平気だよ、…色々考えることが多くてさ、…でも全然纏まらない…どうしたらいいのか…」

俯いて、立てた膝に顔を埋めるようにして丸まってる宏光に、オレは背中から手をまわし抱き寄せた

「言えよ全部、纏まってなくていいから…溜め込み過ぎたら、心…パンクしちまう…」

頭に手を添え、オレの肩にもたせ掛けるようにしてやると、ほんの少し見上げるようにオレを見て、寂しそうに微笑んでくれた

「…言ってみ？」

「オレが…Ωじゃなかったら、今みたいな現実は起こらなかった…」
「ひろ…？」

微かに震えてるような手が、部屋着のスウェットの腿に幾筋ものシワを作った

「Ωじゃなかったら、父親に疎まれる事もなかった…、無理やりオレと引き離されて母親も辛い思いしなくて済んだ…置き去りにされて廓で男に身を売ることも無かった…、それに何より、皆川さんのお父さんに、罪を背負わせることも無かったんだ…っ、オレがΩで生まれてきたから…皆を傷付けて悲しませて…泣かせてる…ッっ、この家を出て行く皆川さんにも、結局オレは何も言えなかった…」

耐え切れなくなったように、宏光は両手で顔を覆った、堰を切ったように嗚咽を漏らす宏光を、オレは両腕で包み込んだ


「違うよ…」

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