君想う夢・君恋し花 …７

愛を育む人 … １２ ページ13

《…アンタの母親は卑しいΩの泥棒猫よっ！あのオンナにされたことを全部アンタにしてやるわ！大事なもの全部奪い取ってやるからっ！》


「嫉妬で錯乱した母親の姿は、オレにはかなりの衝撃だった、もうお前を弟だと思うことは止めようと決めた、お前はオレの母親を苦しませ
、オレ達を不幸に落とす元凶…、そのお前を後に据えようとする親父も許せなかった、嫉妬だ…母親の嫉妬に狂った姿を嫌悪しながら、オレも同じ…、お前の才能と親父の期待を一身に集めてる現実に嫉妬してた」

項垂れる兄貴に、オレはどう言えばいいのか分からなかった、許すとか許さないとか…そういう簡単な言葉で伝える事じゃない

「親父が死んだ時、お前はまだ子供だった、親父は、自分に何かあった時は太輔が然るべき年齢になるまではオレを据えろ…と言い残していた、お前に譲ることを前提にオレは親父の跡を継いだ…体裁だけのお飾り社長、悔しかった…オレだって‪親父の息子で‪α‬だ、親父の残した藤ヶ谷コーポレーションをオレの手でもっと発展させると息巻いた、けど現実はそんな甘いもんじゃなかった、新体制を確立するために御厨達古参を全て切った事で、綻びは修復出来ない所まで広がった、…挙句資金繰りが上手くいかない…、追い込まれたオレは、資金調達のために唆されたカジノに手を出した、それが破滅への入口だった…」

「お前を廓に堕としたのは、稀代の‪α‬のプライドを粉々に砕き散らせたかったからだ、もう二度と這い上がれない沼の底に沈めて、オレの目の入らない場所に閉じ込めておきたかった」

「……」

「でも、そんな事しても無駄だった…、オレの力では何も変わらず、それどころか最悪の事態を招いてしまった、母さんもオレに失望して体も心も壊れちまった、御厨が藤ヶ谷コーポレーションを手に入れたと聞いた時は絶望したよ、御厨は子供だったお前の後ろ盾みたいなもんだったからな、やっぱり運命には逆らえない…って痛感した…」

そう言って、兄貴は何かもを受け入れた様にフッと微笑んだ

「兄貴、オレは藤ヶ谷を出ても構わない、宏光と二人で静かに生きていけたら、それでいいんだ、親父の跡を継ぐのは兄貴が相応しい…」

「いや、オレはその器じゃない…、これからは身の丈に合った暮らしをしていくよ、負け惜しみでも嫌味でもなく、本当にそう思う…社員とその家族の未来を守れるキャパは、オレには無い
、そんなことすら一度も考えたことが無かった…」

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