愛を彷徨う人 … ４０ ページ8
「ミツ、どこに行くの？」
周りを伺いながら外に出ようとした時、背後からニカに呼び止められた
「…えっと、家にいてもオレ、することないから、ちょっと散歩にでも…」
「散歩？…一人で行くの？」
「お、おお…」
自分でも挙動不審だと思いながら、ニカが見逃してくれることを願うしかなくて…、少しの沈黙の後、「ふーん…そう言えば皆川さん、さっき出掛けたんだった、確か夕方までは帰らないって言ってたよなぁ…そかぁ、ミツ散歩行くならオレも部屋でのんびりしよかな、じゃーねー！」って、片目瞑ってみせた
その心遣いに安堵と感謝を乗せて頷きを返し、オレは外へ出た
少し曇り空だけど、大丈夫だろう
ドアを閉め、大門に向かって歩く
改めて振り返ると、本当にステイタスそのままを表した立派な家
太輔は、いずれこの家と会社の全てを継ぐべき人間なんだよな…
だからこそ、オレは今日自分の役割を果たすために、ある場所に向かうことを決めた
「北山さん、どうしました？」
「四宮先生、お忙しい中すみません…」
「いえ、そんなコトは無いですよ、体調は如何ですか？」
「特に変わりないです…」
「そうですか、なら良かった、」
来たのは四宮医院
オレの手術をしてくれた病院だった
セルフレームの眼鏡がトレードマークの四宮先生は、終始静かな表情でオレを見ていた
「この前は、ありがとうございました」
「いえ、本来あるべき場所に戻られたと伺いました、喜ばしいことです」
「はい、…トモが退院した日、背中を押してくれました」
「聞きましたよ…アイツもよく決心したと思います」
トモ…、半分だけ血の繋がったオレの兄さん…そして、ゼロに戻った命の父親…
「今日は、何か私に？」
診察室で向き合った四宮先生が、そう聞いてきた
「はい…、あの……」
「何でしょう？」
静かな眼差しに、オレは思わず片手をお腹に当てた、オレは何をしにココに来てるんだ、一つの命を失って、まだほんの少ししか経っていないのに…
「北山さん？」
「いえ、あ…お世話になったお礼をちゃんと言えてなかったので、それで…」
咄嗟に出た言葉に縋るように、オレはその場を取り繕った、四宮先生は一瞬何かを探る様な表情を見せたけど、直ぐに軽く頷き表情に柔らかさを加えた
「そうですか、ありがとうございます、私もどうしておられるかと思っていたのでお会いできてホッとしました」
「はい…」
心の中のもう一人が、大きなため息をついた…
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 632人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「藤ヶ谷太輔」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
まいまい(プロフ) - 皆川さんが改心してくれて本当に良かった…2人がこのまま幸せに暮らしていってほしいです。ひろの優しさに癒されます。まだまだ続くみたいなので続きも楽しみにしています！ (2020年8月6日 8時) (
レス) id: d8ffbdef31 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - pochiさん» こんにちは！コメありがとうございます！アハハ、書いてる方もゾワゾワしながらポチしております、そしてあっという間の移行です笑笑、終わらない…ホントにいつも長編になってしまって申し訳ございません、宜しければ続き覗いて見てくださいませ！コメ大感謝です！ (2019年7月29日 14時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
pochi(プロフ) - 目には見えないけど、もう一生消えない番の証…だから泣かなくていい…(*´Д`*)ﾊｩ こんなこと言われてみたい… (2019年7月29日 12時) (レス) id: 0d96846f1a (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - のこさん» 胸アツです、10周年を国立でお祝い出来たら何より幸せですねー！藤北の安定っぷりにホッとしております笑笑、14年目に改めてこのGのファンで良かったと思いました、一緒に応援しましょうね！コメ大感謝です！……あ、まもなく移行です… (2019年7月28日 20時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
GAYASAKURA(プロフ) - のこさん» サンドさん強火キス担ですよねー、たいぴーすふるはコチラはタイムフリーでも入らないのでツイとかアメブロで確認しております、ホントに有難いことですー、濱口さんに育てられたぴよぴよキスマイが、サンドさんで羽ばたき…感涙…、オリンピック関連にも参加！ (2019年7月28日 20時) (レス) id: 3b1ef006c1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：GAYASAKURA
| 作成日時：2019年6月11日 18時
