君想う夢・君恋し花 …６

愛を彷徨う人 … ３７ ページ5

「宏光なら、まだ寝てるよ」
「そうですか、…睦まじくなさっておられるなら何よりです、あの方と番われるおつもりなら、HEATの周期を確認なさる様お願い致します」

特になんでもない様な言い方をしながら、含まれた意味はオレ達のプライベートにかなり踏み込んだ内容だった、聞き捨てならない言葉に、オレは皆川に詰め寄った

「ソレ、どういう意味だ？」
「ガヤ！？」

オレの声音に二階堂が即座に反応する、皆川本人は目線一つ変えることなくオレを見返した

「言葉通りでございます、宏光様はオメガ種、αの太輔様とHEATの際に交われば妊娠される、執事として、藤ヶ谷の家の行く末を思えばお子様の誕生は喜ばしいことだと思っております、宏光様には、ぜひ藤ヶ谷を継ぐに相応しいお子をお産み頂きたい」

その言葉が、オレの中で昨夜の宏光の様子と合致した

「皆川、オマエ昨日宏光に何か言わなかったか？」
「私が宏光様に…ですか？」

表情には何の変化も無い、というより、皆川がこの家に来て大分経つけど、感情の変化と言うのを一度も見た事がなかった

「そうだ、明らかに宏光の様子がおかしい、皆川、オマエ宏光に何を言った？」
問いただすと、皆川の口角がホンの少し上がった、

「今と同じ事を申し上げました、藤ヶ谷の家の未来の為に、後継者として相応しいお子様をお願いします…と…」

「だからオメガを産むなと？」
「そうは申しておりません、この家は初代よりαのみが当主を務めておられる、その事実をお伝えしただけです…」

それの何が悪い…、皆川の表情がそう言っていた

思わずオレは皆川のピシッとカラダにフィットしたスーツの襟を掴んだ、ピクリ…と皆川の目が反応したけど、いつものポーカーフェイスが崩れるコトは無かった

「お前にそんなことを言われる筋合いは無い、宏光の子がαだろうとΩだろうと、その子がオレ達の大切な存在であることに間違いはないんだ、余計なコトを宏光に言うな！」

襟を掴んだままそう言うと、皆川の手がオレの手に掛かりグイッと引き離された

「余計なコトではありません、太輔様、失礼を承知で申し上げますが、貴方こそ名家を司るという自覚が足りないのではありませんか？」

「何、だと…！？」

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