君想う夢・君恋し花 …６

愛を彷徨う人 … ６０ ページ31

「みーつっ！ドコ？」
「ニカ？こっちこっち！」

広い庭にニカの声が響く…
振り返って手招きすると、アヒル口が歩いてきた

「外寒くなってんのに…風邪引くよ？もぉ、何してんの？」
「ん、もうすぐクリスマスだからさ、庭の木に飾り付けしたら楽しいかなぁって…」
「あークリスマスな、そういやそうだわ、…櫻華楼にいる時は全く縁がない日だったけど」
「うん…」

物心着いた時には、櫻華楼で生活していたオレ、クリスマスが特別な日だというのを知ったのは、結構大きくなってからだった

《こんな日に廓に来るやつなんて、不幸の塊だろ》
《…ったく、変に意味持たせる日だから、相手すんのマジで面倒くせぇ》

兄さん達は、この日店に来る客を毛嫌いしていた

《宏光覚えとけ、クリスマスなんて日は、娼花にとって最低最悪の日だからな！》

こんな言葉が記憶に刷り込まれて、オレ自身もそう思わざるを得なくて…、でも初めてそうじゃない事を教えてくれたのは、トモだった

《クリスマスはね、一番大切な人と過ごす日だよ、愛が生まれる日かな…》

禿だったオレに、トモがそう教えてくれた…

愛が生まれる日…


太輔と一緒に過ごす初めてのクリスマスを、オレはちゃんと祝いたかった

色々調べて、そうかクリスマスツリーを用意しなきゃ！と庭に赴いてそれらしい木を探した、この家は太輔のお父さんの趣味で純和風の作りになってて、庭もそれに合わせて様々な木々が絶妙なバランスで植えられていた、でも…

「クリスマスツリーかぁ…でもここの木って松とか欅とかばっかだよ？全部バカデカいし…」
「そうだよなぁ…、あ！コレなんかどう？」

一本だけ…庭の外れに植えられてる木があった
背丈は、太輔の背より少し大きいくらい…、

写真で見たクリスマスツリーの枝ぶりとよく似ていた

けどその木は、なぜか周りから隠れるように植えられていて、どうしてこんなトコに？と不思議に思えるほどだった

「よし、コレにしよう！」
「えーでもこの木、リビングからは全く見えないよ？飾り付けしても意味無くない？」
「いいよ、太輔が喜べばそれでいい…」

何とも思わずそう言うと、ニカの目がキランと輝き、ムフフ顔を見せた

「…なに？」
「いやぁ…ホントにガヤのコト好きなんだなぁって思ってさ！」

嬉しそうにニヤニヤしながら言われて、オレもどう返事していいか…

「…いやあの…」
もぉ変な汗出てくるだろっ！！


「幸せになってよ、…ミツにはその権利、十分あるから」

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