たくさんの缶詰。【wrwrd！】短編集 (ページ12)

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地味女と尻軽男。 ut. ページ12

｢なぁAちゃん、今夜暇？｣

先輩にそう誘われ続けて1週間目。

先輩は女たらしと有名で今まで色んな女性を誘っていたらしい。

入社１年目は見向きもされなかったのに2年目の1週間前から急に絡んできた。

まぁきっと絡まれなかった理由は見た目に問題があるからだろうけど。

縁が赤いメガネに前髪は目の真上あたり、
黒く長い髪の毛はシンプルに後ろで一括りしてるだけ。

簡単に言えば『地味女』。

そんな私に彼氏はいるはずもなく一生独身を貫くつもりだ。

そんな私をカモにしたいのか先輩はしつこく食事やデートに誘ってくる。

正直やめて欲しい。

先程も言ったが先輩は何人もの女性で遊んで来た。

遊びとわかっていても先輩のことが好きな人だっている。

そんな方達からの冷たい目に耐えられないのだ。

年上ということもあり変に反論できないし
女性からは睨まれる。

なにか解決策を見つけなくては、

｢あの先輩｣

｢Aちゃんから話しかけてくるなんて珍しいなぁ！どうしたん？｣

｢今夜お食事一緒にするので今後私に関わらないでいただけませんか。｣

すごい勇気を出して言ってみた。

先輩はさっきまでの胡散臭い笑顔をやめどこか怒気の混じった顔で私を見つめる。

｢なんでなん、誰かになんか言われたんか？｣

彼はきっと女性の醜い本性を知っているのだろう。

私を心配しながら質問してきた。

｢･･･いえ、ただ少々周りの目が痛いのです。｣

｢別にそんなん気にしなくてええと思うよ？｣

｢そういう訳には･･･仕事場で居場所は無くしたくないですから。｣

｢別に今の仕事しなくても専業主婦なればええやん。｣

｢は？｣

｢俺の隣、Aちゃん専用やけどどう？｣

この男は何を言っているのだろうか

｢返事は夜一緒にご飯食べる時に教えてな。｣

そう言い残すと喫煙室へ向かっていく。

最後に見た真剣な先輩の表情は本気で好き、ということでいいのだろうか。