ふたりぼっちステラ【東京喰種】【滝澤政道】 (ページ8)

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“ないよ”

そう、言えたらどんなに良かっただろう。

あぁ、人のきみには、ついに好きだと伝えることが出来なかった。この空虚な感情は、怠惰な自分へのバツだ。
そんなことを考えながら、ゆっくり目を閉じ、そして＿＿自身の赫子を滝沢くんの腹へ突き刺した。

「がっ……！？」

彼が怯んだ隙を狙い、自分は彼の下から抜け出すと、すぐさまクインケを展開する。

「赫子……秘川、お前…クインクスかよ…！」

滝澤くんが居た頃は、クインクスなんて無く、当然、自分も赫子を持ってはいなかった。
だが、強くなることに手段は選べない。もう二度と、失いたくない。
そして、自分には適性があった。たったそれだけの、簡単なこと。

「ああ、そうだよ。……だから、言ったじゃないか。喰種の君に殺されるつもりはないって」

「っ、ふざけんな！なんで、なんで…っ」

「っ……！」

彼は、疑問と驚愕、そして悲壮に満ちた目でこちらを見ていた。
あの反応を見るに、クインクスの何たるかを理解しているらしい。
次の瞬間、彼の鋭い爪が自分を襲う。

しかし、あいにく今の自分は滝澤君の知る自分とは違う。

「……今まで自分が、どれだけ寂しかったと思ってるんだよ。……当然、赫子の扱いは身体に叩き込んださ。もう二度と、失わないためにね」

「っ、は……！」

弾かれたように窓枠に手をかけ、そのまま闇夜に消えていく滝澤くん。

「……タキザワくん。…まだ、自分のことを好いていてくれているかい？」

問いかけが届くはずは、なかった。