ふたりぼっちステラ【東京喰種】【滝澤政道】 (ページ5)

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一方

「……っはぁ、はぁ……くっそ、何なんだよあの女ァ！！」

別に、負けたわけじゃない。むしろ、その逆だ。なのに、俺は必死になって逃げていた。
……まさか、姫サンがあんなことを言うとは思ってなかった。

『__君に、好きだと言ってないのに』

「……っ、」

彼女の声が頭から離れなくて、思わず舌打ちをする。

(……ああ、最悪だ)

俺だって、本当はずっと好きだった。初めて会った時から、彼女に惹かれていった。
でも、今となっては、俺が彼女を好きになる資格などない。

「俺、は……」

喰種になった時点で、人間に戻ることはできない。そんなことわかっているはずなのに、胸が痛くて仕方がない。

「っ、……姫サ、ン……」

「滝澤くん、泣いてるの？」

「…エト」

いつの間にか現れた喰種に、俺は目を見開いた。

「お前、どうして此処に」

「タタラさんのお使い。アオギリのみんな、君待ちなんだから」

俺は黙って立ち上がり、エトの後を追う。

「……」

__人間として生きてきた記憶があるからこそ、俺はアイツを殺すことができない。
いや、そんなものは上っ面の大義名分にすぎない。

好きな女だから殺したくない、ただそれだけのこと。

「……なあ、エト」

「なあに？……あ、もしかして、あの彼女のこと考えてるの？」

「……別に」

「ふーん。まあ、いいけど。それより、任務が終わったら、今日の晩御飯はね__」

「……ヒト一択だろ」

人間だった俺は、人間のフリをしながら生きている。