✵こんにちは、嘘つきですね。 ページ12
「お疲れ様です。……あれえ、秘川
旧多二福一等捜査官。
物腰が柔らかく人当たりもいいが、油断ならない男といった印象。
「ああ。他の方は別件に当たっていたのではないかな」
ナッツクラッカー、及び人間オークションの殲滅からはや一ヶ月。
事実上、オウル＿＿滝澤くんを駆逐しそこねたものの撃退したということになる自分は、大量の喰種を駆逐した功績も相まって准特等の肩書を与えられた。
「へえー」
「……何か？」
「いえ？……あ、そうそう。この間の喰種のことなんですけど…確か“オウル”でしたっけ？」
「……それが、どうかしたのかい？」
「実はですねえ？僕、あの喰種のこと知ってるんですよ」
「……どういうことだ？」
「ふふっ、知りたいですか？」
彼は、いつものように笑った後、真面目くさった顔でこう続けた。
「__僕、彼を殺したのはあなただと思ってました」
「っ！？」
「なあんちゃって！冗談ですよぉ。そんな怖い顔しないでくださいよ〜」
「……」
(この男は危険だ、人にとっても……喰種にとっても。)
あと、いちいちカンに触る発言が多くある、気がする。
「……ホントに殺したとか思ってませんからね！？違いますよ〜！僕はちゃんと見てたんですから」
「見ていた？」
「はい！梟線で彼が死んだところも、その後喰種が死体処理をしてるところも、ぜぇんぶ！だから安心してください」
「……」
こいつ……
なら、なぜ助成に入らなかった？
なぜ、そのまま見殺しにした？
そもそも、梟戦にこいつの姿はあったか？
「あ、信じてないなぁ。まあいっか。じゃあ一つだけ教えてあげましょう！」
「……何を」
「彼が殺されたのは、
「……！」
「じゃ、そういうことで」
…一方的に喋って、行ってしまった。
「……自分の、所為ではない……か」
確かに、自分が彼を直接殺したわけではない。
でも、それは彼が死んでしまったという事実に変わりはないわけで。
「……彼は、嘘つきだね」
彼が、あの言葉を通して何を言わんとしているのかが分かる。
(旧多一等。生憎…自分は凹んでいる暇など無くてね)
自分はただ……喰種を殺し生きるだけ。
「……今日は、帰ったら少し早めに寝よう」
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