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やっぱり……と周りからはため息が聞こえる。
こんな事ってあるんやろうかと思った。
こいつら、いやこの海賊団は仲間を信頼してる。
そして船長との関係も割とフラットに見える。
これは願ってもないチャンスや。
このチャンスを逃したら、これからも俺はこの船長の元でこき使われる羽目になる。
そんなん絶対ごめんや。
「お、お願いします！」
そう言って勢いよく頭を下げた。
「はいじゃあ止血しよか。俺はジュンタ。よろしくな。」
さっきまで敵やったのにも関わらず、親切に声をかけてくれることに驚く。
しかし驚いてる暇もなくジュンタさんによって腕を押さえつけられる。
「シゲ、引っこ抜いて。」
「ほーい。痛いやろうけど我慢してな。」
そう言うとシゲと呼ばれた奴が腕に突き刺さったままのナイフを引き抜く。
素早くあて布をして止血してくれる姿に動揺が抑えきれず、思わずその場に座り込んでしまう。
いきなり座るな！って怒られたけど、そんな余裕もなくやっと解放されたという安心感からか呆然とされるがまま。
その間にもアキトさんとリュウセイさんは俺の元仲間たちをせっせと元の船に運んでいく。
カミちゃんさんはどこからかボートを引っ張り出してきている。
今にも落ちそうな船の端にボートを置き、新しい船長がその上にぐるぐる巻きの元船長を乗せて足をかけた。
「俺はな、仲間を大事にできん奴は大嫌いやねん。」
笑顔でそう言うと、ボートにかけていた足を下ろす。
抑えがなくなったボートは海へ真っ逆さま。
「この俺にこんなことをしてタダで済むと思うなよ！」
元船長はぐるぐる巻きの状態でも尚、諦めの悪い言葉を口にする。
「カミちゃん。」
船長がそう呟くと、カミちゃんさんが何かを高速で投げる。
ひぃっ！という元船長の声。
「餞別や。次に会う時があればええなぁ。」
船長のその言葉を合図にか、船が動き出す。
ボートの底には、元船長の顔スレスレを通ったであろう小型ナイフが突き刺さっていた。
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作者名：かんた | 作成日時：2021年10月8日 23時
