指名手配 (赤) ページ1
やってもうた。
手元の指名手配書を見ながらどうしたもんかと頭を抱えるけど、良い案は浮かんでこない。
ラッキーだったのは顔写真を撮られていないこと。
「それにしても10万ジャニーって、安すぎやろ俺！」
とか言いながらもこうやって指名手配をされたのは、この船でまだ俺だけ。
それだけでもちょっと有名人になったような気分で少しだけにやける。
やけど、このままやったら確実に怒られる。
特にカミちゃんとジュンタ。
あの二人に見つかったら何を言われるかわからへん。
気が重いが、飯の時にでも白状しよう。
そう腹をくくると、指名手配書を雑に折りたたみ、ズボンのお尻ポッケにねじ込んだ。
「「「「「「「いただきます！」」」」」」」
今日の飯は皆大好きカラアゲ。
テンション爆上げで頬張る。
やっぱいつ食ってもうまい。
何たってカミちゃんが作ってるんやから。
カラアゲの味に幸せを感じていると、ジュンタが口を開く。
「そろそろこの街出ようと思うねん。次に目指すはここ。」
そう言って地図を広げる。
この世界は大雑把にわけてシーウエストとシーイーストという2つの海を境に分かれている。
2つの海、シーオール。
伝説の海賊がシーオールに7つの財宝を隠したと言われている。
100年経った今でも、それは1つも見つかっていない。
見つかってない事にロマンを感じ、男は海賊を目指すものが多い世の中や。
かく言う俺もその1人。
って、ちゃうちゃう！
そんな事はどうでもいいねん。
早くこの街から出ないと、ヤバいんや。
「ええやん！早く行こうや！」
ジュンタに同意すると、全員不審な顔で俺を見て来る。
やめろ。そんな目で見んな！
「どうしたんシゲ。いつもやったら『え〜！もうちょっとゆっくりして行こうや！』って言うやんか。」
余計な事言わんでええねんコタキ！
「何か隠してるんやろ。」
ジロっとカミちゃんに見られたらもう白状するしかない。
「ごめんなさい……。」
俺は尻のポッケから手配書を出した。
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作者名：かんた | 作成日時：2021年10月8日 23時
