緊急事態（緑） ページ26
「ありったけの、米を〜♪かき集め〜♪」
「歌ってる場合やないの！」
ひょうひょうと歌いながらキッチンで一緒に食料を探すシゲ、と俺。
俺は今、非常に焦ってる。
なぜなら、この船に明日以降分の食料がないから。
そして最悪な事に現在航海の真っただ中の為、近くに陸地はない。
まだ十分にストックがあると思ってたけど、流石に大の大人が7人もいればなくなるのなんてあっという間やったみたい。
完全に読み間違えた。
パントリーに少量の米しかない事に絶望を感じていた時、丁度小腹をすかせたシゲがやってきたので一緒に探してるってわけ。
「アカン、やっぱないわ……。」
パントリー内は隅から隅まで探したけどない。
「ないもんはしゃーないし、ジュンタに進路聞いて近くの島寄れへんか聞いてみようや。」
そうシゲに励まされ船長室へ向かう事にした。
ジュンタに事を知らせると、渋い顔で地図を広げられた。
「今、俺らがおるのはここ。」
そう指さした場所は海のど真ん中。
どうやら近くの島まで最短でも3日かかるらしい。
まさか、俺が皆を飢え死にさせてしまう……？
コックとしてあり得ない状況に青ざめる。
「大丈夫やろー！いざとなったら飛んでる鳥撃ち落として食ったったらええねん！」
操舵しながら俺たちへ向けて叫ぶアキトは非常に頼もしい。
けど、あいにく曇り空で鳥なんて1羽も飛んでない。
「あ！今ハマちゃん釣りしてるんちゃうん？食料釣れたか聞いといでや！」
アキトのその言葉に、少しだけ希望を取り戻した俺はジュンタにお礼を言ってシゲと共に甲板に向かった。
甲板に出て釣りをしているハマちゃんに近づくが、見るからに1匹も釣れていない。
聞くまでもない状況に危機感を感じる。
状況を説明すると、3日くらいやったら大丈夫やろ〜と呑気な返答。
「この辺サメしかおらんねん！最っ悪や。あ、何か引っかかった海藻やったらあるで。これ食べれる？」
ほい、と差し出されたのはアフロみたいな海藻。
「ぶっひゃっひゃ！こんな海藻釣るとか天才やん！」
シゲは喜んで受け取ってるけど、俺は笑えない。
一応リュウセイにも伝えとくか……。
もしかしたら自室に何か隠し持ってるかもしれへんし。
いや、リュウセイの事やから何も持ってへんやろな。
重い足取りで部屋へと足を進めた。
シゲはこのままハマちゃんに預けよう。
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作者名：かんた | 作成日時：2021年10月8日 23時
