五月二十日 ページ10
桐山さん、中間さん、ありがとうございます。
俺、生きてる。
いや、生き残ってしまったの方が正しいかもしれない。
今朝、日が昇る前から戦闘機に搭乗して待機していた。
朝日が出て来るのを他人事のようにボーッと見ていたのを覚えている。
辺りが明るくなって来たところで、桐山さんの叫ぶ声が響いた。
「第七海軍特攻隊、出撃！」
上官の人だらけのはずなのに、皆軍帽を脱いで敬礼していた。
桐山さんも中間さんも涙を堪えているように見えた。
最大限の敬意を払ってくれていることは明らかだった。
次々と戦闘機が空に飛ぶ。
覚悟を決めて口を結ぶ者もいれば、泣き叫びながら飛び立つ者も。
そんな中、俺は飛べなかった。
戦闘機のエンジントラブルで。
次々に飛び立つ仲間を見て覚悟を決めたはずなのに。
一人だけ飛べないなんてことあるはずないと思った。
何度も何度もエンジンをかけ直したが、一向に機体は動かない。
そうしている内に、敵地に機体ごと突撃して行く仲間が見えた。
梅も竹も松も、皆敵地に機体ごと突っ込んで行った。
もう、何も考えられなかった。
置いていかれたと言う気持ち、命令に従えていない焦り、何もかもがぐちゃぐちゃ。
気がつげは中間さんが俺の腕を掴んでいた。
「藤井、もうええ！機体から降りろ……。」
一心不乱にエンジンをかけ直していたせいで、俺の手はボロボロ。
それでも動かなかった俺は、桐山さんに無理矢理機体から降ろされた。
「藤井！お前が生き残ったのは理由があるはずや。あいつらの勇姿、一緒に見届けよう。」
そうやって残りの特攻隊が突撃して行く姿を、見ている事しか出来なかった。
死ぬのが怖いと思っていたはずなのに、一人だけ残された事に強い恐怖感を感じた。
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かんた(プロフ) - #TODAYさん» 感想ありがとうございます！そう言っていただけてとても嬉しいです＾＾ (2021年3月13日 11時) (
レス) id: b73ff05158 (このIDを非表示/違反報告)
#TODAY(プロフ) - 素敵な作品を、ありがとうございました。いつまでも心に残る作品になりました！ (2021年3月13日 7時) (レス) id: 3e33249399 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：かんた | 作成日時：2021年2月2日 15時
