関西家族物語。

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二人でリビングへ戻ると、おバカさんたちはなんだか楽しそうに笑っていました。


「おかん、淳太くんと一緒やな！！昔、おとんがいいふーふの日忘れたら、話してくれへんかったんやろ？」


「こら、二人の内緒や言うたやろ！」


「あ！忘れとった！」


やっぱアホやな、と心の中で思いながら、賢い私たちは顔を見合わせて笑い合いました。




「いい夫婦の日なんてどこで学んできてん」


「のり先生やって」


「あいつはそういうキャラちゃうやん！」


最近、実は既婚者で子供までいた、とカミングアウトした、淳太の担任の先生は、実は夫の呑み友達です。


「あ、ダンユウ元気か？」


「元気や、言うてたで」


ダンユウとは、クラス内で、どんな名前がいいかな、と盛り上がったときに、


「男の子で、優しい子に育ってほしいから、ダンユウくん！」


と言い出した純粋な女の子の発想に、キタナイ大人が大爆笑して、ずっと使い続けている息子さんのあだ名です。


「もうそろそろ立つか？」


「いや、まだやって。」


「おいこら、ええ加減にせえよ信五」


悪乗りが過ぎるバカ男を一喝し、睨み付けました。


「おー怖。なぁ照史、おかん、怖いなぁ？」


「おかん怖ー！」


照史を巻き込んで笑い始めましたが、不健全な発言はとりあえず慎んだので、まぁよしとします。


「ほんっま、のり先生といいうちのバカ男といい……」


「そうやでおとん、さっきからのり先生のことバカにしとるけど、いい夫婦の日忘れとったやん。のり先生の方がましやで。」


淳太の言葉に、夫はカッと目を見開いて、


「それはちゃうぞ淳太！」


と怒鳴りました。


淳太はビックリして、目を丸くしています。


「ほれっ！」


どん、と夫が机の上に置いたのは、


ボジョレーヌーヴォーです。


「うちでは毎年、これがいい夫婦の日の恒例やねん！Aがアマトリチャーナ作って、俺がボジョレーヌーヴォー買ってくる！どや、のりなんかよりおしゃれやろ！！」


そう、これが我が家の恒例行事。


元を辿れば、夫が、結婚一年目にいい夫婦の日を忘れたことに対するご機嫌とりに、ワインが好きな私のためにボジョレーヌーヴォーを買ってきたことが始まりですが、それは内緒にしてあげようと思います。


「……ふーん。」


淳太は、ちょっと悔しそうですが、満足そうです。


なんやかんや、両親の仲がいいのがわかって、嬉しかったんでしょうか。

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