文豪の恋煩い。

happyXmas(谷崎) ページ10

もし良かったら、明日二人で出掛けませんか」
いきなりそう切り出されて、僕は少し驚いた。
今は十二月二十三日の夕方。明日は十二月二十四日、クリスマスイブだ。と云う事は……？
「えっと、その……クリスマスデート、ってやつです」
Aはそう云うと、少し頬を染めて俯いた。

僕とAは一応、付き合っている。「一応」と云うのは、数週間前に告白して以来、特に何の進展も無いからだ。彼女は奥手だし、僕も……自分で云うのも変だけど「探偵社・東のヘタレ」だし。
だから、クリスマスは出掛ける口実を作るチャンスだった。真逆Aに先手を打たれるとは思って無かったけど。
「矢っ張り非番ですし、予定とかありますか？」
Aが不安げに首を傾げる。僕は慌てて返事をした。
「大丈夫、明日は一日暇だから。……そう云えば、何でAが明日僕が非番だッて事知ッてるの？」
「ナオミさんに教えて頂いたんです」
成る程。有り難う、ナオミ。
「『折角だから、兄様をデートに誘ってみたら？』と……。結局こんな時間まで伝えられなかったのですけれど」
「こんな事を突然云い出すなンて吃驚したけど、ナオミの差し金か」僕は一寸笑った。
「そうだ、じゃあ明日は何処で待ち合わせようか」
こうして明日の事を色々取り決めて、家に帰った。鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気だったからか、ナオミに少し引かれた。

字数の関係で次へ。(泣)

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