【antsa】公園で出会った彼は-3-【Sibaken】 (ページ6)

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ー明香里視点ー

「……もし…。」

無言で俯いていたすずちゃんが、
小さな声でこう言った。

「…もし、本当に私が芝健を…好きになったとして、
これからどうすればいいんでしょうか…？」

夕「どう…かぁ。
告白、してみたらいいんじゃないかな…？
ずっとモヤモヤした気持ちでいるのも
苦しいでしょ？」

「…告、白？…できませんよ…。」

明「！？どうして…？」

私がそう聞くと、すずちゃんはゆっくり顔を上げた。

すごく苦しそうな表情に思わず私は夕香里と
顔を見合わせた。

「…もし、告白して…、振られて、
それで、気まずい関係になったら…？
…嫌、です。私、そんなの…。
だから…このままで、いいんです…。
私にとっての芝健は、恩人の、ままでいい…。
それに、彼には…私なんかよりも、もっと
お似合いの人がいます、きっと…。」

夕「そ、そんなことないよすずちゃん！
だって、芝健は…！」

私は何かを言おうとした夕香里を静止した。

明「待って夕香里。
…分かった。告白するかしないかは
すずちゃんの自由だよ。
私達が口出ししていいことじゃないし…。
…でもすずちゃん…、後悔しない方を選びなね？」

「…………。」

夕「…すずちゃん、何かあったらいつでも相談して？
私達、すずちゃんのこと応援してるから。」

ぽんぽん、と夕香里がすずちゃんの頭を撫でる。

「…は、い…。」

私は夕香里に大人しく頭を撫でられている
すずちゃんを見つめながら考えた。

すずちゃんは、きっと怖がっている。

自分の芝健に対する気持ちを自覚したはいいけど
その気持ちを芝健本人に伝えてからの、
いい結果か悪い結果かは関係なく、
関係の変化を怖がっている…ように思える。

それに彼女は、芝健に出会う前は
虐待を受けていたらしい。

そんな環境で生きてきたのなら、
人を愛する、愛されることがどういうことなのか。

恋愛というものがどういうものなのか。

それを今までずっと知らずに、
知る機会すら与えられずに生きてきたなら、
尚更かもしれない…。