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『もしもし、』
『、、ぇ、』
「、?どうしたの、」
聞こえてきたのはあの男の声。
告げられた言葉は僕が最も恐れていた事だった。
嗚呼、僕は何をしていたのだろう。すべて僕が悪いのだ。
愛されて、大切にされて、何も見なくなってしまったこの目が憎い。抱きしめられて撫でられて、あの冷たい路地裏の温度を忘れしまった身体が憎らしい。
何ヶ月も続けたあの行為を水の泡としてしまった僕自身が。
『い、いかなきゃ、、っ、いかなきゃ、』
「何があったの、聞こえてる、?何が、」
『行かないとっ!!、ケホ、兄さんたちが、ぁ!ゲホッ、ゴホッゴホゴ、ホ』
息の吸い方はどうだったろうか。しかしそんな事は今どうでもいい。
兄さん達に危機が迫っている。
あの男に、あの忌々しい穢いあの男に、兄さんたちを触られてたまるものか。
悔やんでも悔やみきれない。自分自身の選択がこんなにも間違った方向に進んでいたなんて。
どうして気付かなかったのだろう、こうなると分かっていたのに。過去の自分はそれを理解していたのに。
周りの愛に絆されてしまった。
優しい温もりに溶かされてしまった。
血も涙も鼻水もヨダレも汗もなんでも流れてしまえ。
この身体に残るのは不純だけなのだから。
僕が悪い。僕だけが。
結局こうなるんだ。
愛は素晴らしかった。尊かった。
だからこその絶望が存在する。
光がある故にできる影が。闇が裏側が側面が。
それが僕だったのだ。
兄弟という名の光の影が、僕だった。
妬ましい気持ちはなかったけれど、どこか違う何かがあった。
その差を感じていたからこそああして捨て身の行動に出ていたのに。
分かっていたのに。
『待っててください、』
やっと救えるのだ。本当の救い。
エゴではない救いが。
.
これがまたエゴである事には気づけなかった。
いつも寸前で気付くことができない。
深く深く考えて悩んだ結論がいつも足りない。
届かない。
輝かしい彼らには一歩届かない。
影は光には触れない。
光は影を作り出す。
それでよかった。
光があるから影が存在し、
影があるから光が存在する。
彼らを輝いた未来に押し出せるのなら、僕は。
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リエル(プロフ) - ううううううううう…終わってしまった… (2019年4月3日 23時) (レス) id: 4f0744403a (このIDを非表示/違反報告)
春斗(プロフ) - わあああ独歩とのおまけ有難う御座います好きですぅぅ…………兄弟もとい家族愛的な関係とてもよきですた……何かあった時に一郎達とは別に頼れるお兄さんで優しく見守っててくれる感じがとても微笑ましいというかもう尊い……有難う御座いました(*´ω`*) (2019年3月27日 2時) (レス) id: 8cfab7cc4c (このIDを非表示/違反報告)
黒猫(プロフ) - 既に投票済みです……だと……?! (2019年3月1日 16時) (レス) id: 77336b66d1 (このIDを非表示/違反報告)
春斗(プロフ) - それと、もし宜しければ独歩とのおまけもあの…是非……!!!!!!! (2019年3月1日 2時) (レス) id: 8cfab7cc4c (このIDを非表示/違反報告)
春斗(プロフ) - コメント失礼致します。ドシリアスな中にちょいちょい挟まれるギャグがとても良い味を出してて、あの、全体的に好きです。(語彙力)取り敢えず四男君をずっとあれしてた男はウサポリ公にガチでしょっぴかれてたら良いなって思いました。 (2019年3月1日 2時) (レス) id: 8cfab7cc4c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:須臾 | 作成日時:2018年12月5日 22時